エネルギー転換の他に道なし

ツェルディック 野尻紘子 / 2015年7月26日

「エネルギー転換を、遂行するかしないかは問題外」、「エネルギー転換以外にオルタナティヴはない」というドイツ電力大手4社のうちの2番目、RWE社のペーター・テリウム社長の言葉を読んでびっくりした。原発を運営し、褐炭火力発電所もドイツ一多く所有している同社は、ドイツ政府の脱原発決定、長期的な二酸化炭素削減推進で最も大きな打撃を受けている。その同社の社長が書いている文章だ。他の電力会社も以前の方針から方向転換している。この国のエネルギー政策は、もう逆戻りすることはないだろうという印象が強まる。

テリウム氏は、ドイツ政府の与党であるキリスト教民主同盟(CDU)の経済協議会が主催した「経済の日」のための全国紙「フランクルフター・アルゲマイネ」の特集ページへの寄稿文で、「 電力会社は当分の間、構造変化と構造危機の難しい道を歩まなくてはならないが、長期的には環境保護、再生可能エネルギー、エネルギー効率の向上を推し進める以外に道はない」と書いている。

昨年12月に原発や火力発電部門を切り離して別会社に移し、「事業の中心を再生可能エネルギーや顧客対応の送・配電網などに絞る」と大々的に発表した電力大手1番目のE.ON社とは異なり、方針が今まで良く見えなかったRWEだが、同社は「エネルギー転換を包括的に進める」とテリウム氏は続ける。具体的には、電力の生産、取引、販売、配電網が事業内容の4本の柱となるそうだ。

生き残りのために特に力を入れるのは再生可能電力の生産で、同社はこの6月に北ウェールズの沖15kmの場所に世界で2番目に大きな容量約1000MWのウインドパークをオープンしたばかりだ。5月には北海に浮かぶドイツのヘルゴランド島の沖に295MWのウインドパークをオープンしている。これで同社はデンマークのドング社とスウェーデンのファッテンファル社に続いて欧州第3位のオフショア風力発電会社になっている。

「スマート・ホーム」も同社が得意とするところだという。家庭内の電気機器をデジタル機能を駆使して操縦し、節電と電気代節約を可能にする業務は子会社のRWEエフィシェンシー社が行っている。配電網のインテリジェント化、つまり配電網にデジタル機能を持たせて、揺れる再生可能電力の生産と電力の需要を上手く調整させようにすることも大切な業務という。更にアラブ圏、特にアブダビとの協力も進めており、大規模な風力・太陽光発電装置、送電網、蓄電装置の構築なども考えているという。一方、石油と天然ガス採掘子会社であるDEA社の売却は先ごろ完了しており、ウラン事業のウレンコ社は現在売りに出している。

ドイツ電力大手3番目のスウェーデン企業、ファッテンファル社のトゥオモ・ハタッカ社長も、「我々はエネルギー転換に集中し、その転換のための投資をスウェーデン、ドイツ、英国、オランダで行う」と新聞のインタビューで述べている。「エネルギー転換はマラソンのようなもので、我々は現在16kmの地点にいる。走者は途中で死んだりするかもしれないが、我々は決して放棄しない」と語っている。オフショア風力発電、コージェネレーション(熱電併用)による熱の供給、分散型発電のコーディネーション、配電網の運営などが将来事業の中心になるという。

電力大手4番目のENBW社も風力発電に力を入れようとしているし、フランスのエネルギー大手トタル社からドイツ国内の企業相手の販売事業をこのほど請け負うことになった。発電だけでなく、サービス部門への進展だ。ドイツで人口が一番多いノルトライン・ウェストファーレン州の28の地域発電会社が作るトゥリアネル連合でも、共同で風力や太陽光発電装置の建設が進んでいると報道されている。ドイツで、エネルギー転換の方針が後戻りすることはあり得ないようになってきた。

 

 

 

 

 

 

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