我が家のエネルギーシフト、石油から天然ガスへ、そして風力ガスへ

やま / 2014年1月19日

schornsteinfeger 1新年早々、地域の煙突掃除専門店から書類が届きました。『メリー・ポピンズ』でおなじみの煙突掃除人は幸運をもたらすといい伝えられ、ドイツでは伝統のある専門職です。煙突の管理をして、火事や一酸化炭素中毒の危険を防ぎ、住居を守る煙突掃除人は縁起が良く、そのマスコット人形を4つ葉のクローバーにさして「新年の幸福を望む」という思いでプレゼントする習慣がドイツにはあります。今年は運が良いなと思いながら煙突掃除人のマークのついた郵便を開けました。

去年の末、わが家の暖房給湯用のエネルギー源を石油から天然ガスに変えました。1980年代の石油だきボイラーを取り外し、高効率なコンデンシングボイラーを新しく設置しました。送られた書類はその工事の後に行われた排気計測の結果を伝えるものでした。

                                                              排気損失率                         排気温度

天然ガス・コンデンシングボイラー                         1%                                     摂氏42度

今までの石油だきボイラー                                   9~11%                             摂氏210度

節約できた年間の暖房費を計算するのにはまだ早いのですが、報告書に載っていた数字を比べてみると、いままで煙突から、無駄な熱エネルギーがこんなに大量に出ていたことがわかりました。コンデンシングボイラーは天然ガスが燃焼するときに放出される蒸発熱を利用することで熱効率を高めることができます。ですから今までのボイラーと比べてエネルギーを30%節約できるそうです。天然ガスに含まれている主なガスはメタンで、硫化水素などの不純物は除去されています。天然ガスは石油よりもCO2排出量が少なく、煤煙もほこりも出ません。今までは毎年、煙突掃除人が屋根に上り、特別な長いブラシを使って、レンガの煙突にたまったバケツ半分ほどの灰を取り除いていましたが、これからは煙突掃除は無用で2年に一度排気計測に来てもらうだけで良いそうです。

この家に移った20年前、料理に便利なのでガスに変えたいとは考えましたが、暖房には前の住民が使っていた石油暖房を引き続き利用できたので、家全体のエネルギーシステムを変えるまでには至りませんでした。1994年7月の領収書を見ると暖房用の石油は1リットル当たり41ペニヒ(約29円)で、我が家の年間消費量は約3000リットルで、計算してみると1ヶ月の暖房費が約51ユーロ(約7200円)となります。その10年後2004年に払った石油の価格は39.4ユーロセント(約56円)で、2倍近くとなっていました。太陽熱温水機を取り付けて、外壁の一部を断熱したので、石油の消費量を2500リットル以下に下げることができ、1ヶ月の負担は2倍にはならずに、暖房と温水の費用は月約82ユーロ(約11,700円)でした。ドイツの住宅はセントラルヒーティングが当たり前で、室温は冬中どの部屋でも19~21度あるのが普通です。各部屋に設置する電気ストーブは暖房設備として許可されません。なぜなれば、電力1kWhを化石燃料で生産する場合、約3倍の1次エネルギーが必要だからです。去年、支払った石油の価格は1350ユーロでした。省エネ増築をしたり、使っていない部屋の室温を18度に下げたりして、年間消費量を20年前の半分に節約することができました。石油1リットル当たりの値は89ユーロセント(約126円)で1994年度の価格と比べると4.3倍になります。

古いボイラーは効率が悪く、環境への負担が大きいので、ドイツ政府は飴(補助金)と鞭(省エネ法)の政策で設備を取り替えることを勧めています。我が家のボイラーは1983年に設けられたもので、排気損失が9~11%で許可された最高値を辛うじて下回っていました。5年前の冬、ボイラーに故障がおこり、故障の原因だったバーナーだけをあわてて取り換え、新しい設備を入れるチャンスを逃してしまいました。

そして去年の夏、石油タンクをコントロールしている機器が故障を表示していました。石油タンクはガレージの下に設けられ、コンクリートでできていて、石油3000リットルが収納できます。内側にはビニールの膜が張ってあり石油漏れを防いでいます。5年に一度検査官がタンクの安全性を確かめますが、それでも石油が漏れて環境汚染のリスクがあるので損害賠償責任保険に入ることが義務付けられています。専門店に来てもらうと、はっきりした原因はわからず、最悪の場合タンクを空にし、作業員がタンクに入り、ビニールの膜をチェックしなければならないということでした。ビニールの膜は30年間保証されていますが、タンクが製造されたのは今から57年前ですから、穴があったとしてもおかしくはありません。5年前にバーナーに支払った無駄な金額が2000ユーロ(約28万円)で、今回こそは古い設備に投資するような間違いはしないようにと考え、専門技術者に相談しました。エコで、しかも技術的にも経済的にも能力が高い設備を検討した結果、やはり天然ガス・コンデンシングボイラーがこの家に適していました。早速、専門店4社に見積もってもらい、信頼できる店を選ぶことができました。

8月末に都市ガス会社に供給手続きを申請しました。道路の下にガス導管を通して、専門店がコンデンシングボイラーを設置して、やっと工事が完了したのは12月の中旬でした。新しいボイラーはコンパクトで壁に設置されています。古いボイラーが置いてあった畳1畳ほどの間は新しい役目を待っています。古いボイラーはバーナーに火がつくたびにゴーという音を出していたのですが、新しいボイラーは音がまったくしません。あまりにも静かで、故障しているかと心配になって、確かめに地下室に行ったことが何度かありました。

001_windgas_fuer_alle 2新しい技術を取り入れて暖房費が節約できます。エネルギー価格が今のように上がっていくと、工事に投資したコストは10年ほどで償却できるでしょう。天然ガスに換えて嬉しかったことはガス会社を自分で選べることです。インターネットで調べる際、「エコ」「持続可能性」「1年間価格高保障」「月払い」などの選択オプションを入力してみました。検索した後、環境保護団体として有名なグリンピースが売っているウインドガス(proWindgas、風力ガス)が一番気に入りました。天然ガスはCO2排出量が石油よりも少ないとはいえ、化石燃料で枯渇性エネルギーです。再生可能なバイオエネルギーの利用は増えていますが、食用作物生産と競合するという批判も少なくはありません。

Enertrag Windgas131021.cdrエネルギー供給会社・グリンピースが売り始めたガスの資源は水と風力。風力で得られた電力を利用して水を酸素と水素に分解します。電圧をかけて水を酸素と水素に分解する方法は既に200年前、イタリアの物理学者アレサンドロ・ヴォルタ(Alesandro Volta)により発見されたそうです。この方法で得られた水素をエネルギーとしてガス消費者に供給できるハイブリッド熱発電所が現実になりました。供給スタートは今年度の予定です。風力ガスの料金は1kWh当り6.95セントです。普通ガス使用量1m3は約10kWhと換算できます。風力ガスの料金の中には税金などのほか、風力ガス促進料金が0.4セント含まれています。去年のドイツの天然ガス料金の平均が1kWh当り6.37セント(9円)で、新しい技術はそれほど高いとは言えません。再生可能なエネルギーの先進国であるデンマークの天然ガス料金は1kWh当り11.08セント(15.67円)で、スウェーデンの場合は11.74セント(16.60円)でした。エネルギーが高くなるほど再生可能なエネルギー生産の技術に力が入れられるようです。

ドイツ人のエネルギー年間消費量は一人当たり約50,000kWhで、それを一日当りに換算すると140 kWhになります。馬力に直すと、子供も大人も問わずに一人当たり8頭の馬を1日中働かせることになるそうです。たしか「長くつ下のピッピ」のバルコニーには馬が1頭いましたが、これが8頭もいたら………。

 

注:円の換算は2014年1月のレート

関連リンク
http://www.greenpeace-energy.de/windgas.html
https://www.enertrag.com/projektentwicklung/hybridkraftwerk.html

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