1クリックで温暖化を防ぐ
カーニバルが終わるとイースターまで40日間、断食期間が始まります。悪い癖から心も体も解放させるという意味でしょうか。この期間、カトリックの習慣では肉、アルコール、甘いものなどを進んで節食しようと努めます。「このような我慢は初心者のやること。断食ではなく、今こそは断CO2期間を過ごすべき」という記事が南ドイツ新聞に掲載されました。
「私たち一人ひとりが毎年約11トンに相当するCO2で環境を汚染していることはご存知だろうか」と記事は始まります。象の体重は約2トン、大型トラックが4.5トン、教会の鐘が7~8トン。毎年、私たち一人ひとりが大気へ送る二酸化炭素の量と比べれば、これらは軽いものです。ドイツの住民一人が1年に排出する二酸化炭素を風船に入れたとすれば、この風船の重さは11トンです。(2012年度統計)
去年の12月、パリ会議で195カ国の代表者が集まり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を大幅に削減し、気温上昇を1.5~2度に抑える方針を発表しました。温暖化を止めるには、これからのCO2排出量を1万億トン以下に抑える必要があります。この量はいかにも多量に思えますが、世界のCO2排出量が今までのように変わらないとすれば25年後にはこの限界に達してしまうそうです。
ヨーロッパでCO2排出量が最も多い火力発電所5基のうち4基がドイツで稼動しています。そうした中で、市民一人が「温暖化ガス排出食」と言われる牛肉を食べるのをやめても意味がないかもしれません。それがジレンマです。「個人一人では悪い状態を変えることは無理だが、一人ひとりが行動しないと何事も変わらない。そして、快適さを維持しながら個人が温暖化ガス排出量を約40%減らすことができる」というポツダム気候影響研究所のロイスヴィグ博士の話を同記事は引用していました。今回の断食期間は、個人の「断CO2期間」を始める良いチャンスかもしれません。人口8千万のドイツの市民がそれぞれ二酸化炭素排出量を減らせば、2052年に予測されている干ばつを防ぐことは可能でしょう。記事に紹介されていた温暖化ガス排出削減方法は次のようでした。
エネルギー
私たちの生活にとって一番重要なエネルギーは電力でしょう。ドイツの統計では1kwhの電力を生産する際、排出されるCO2の量は平均559gです。褐炭火力発電の場合、CO2排出量は1,153g、石炭発電の場合は949gに及ぶそうです。欧州では電力が自由化されていて、消費者は800社の中から電力会社を選べます。インターネットを利用して100%グリーン電力を扱っている電力会社へ変更することは簡単です。ドイツの一人世帯の電力消費量は年間約2,700kWhとすれば、褐炭火力発電からグリーン発電に変えることにより年間約3トンの温暖化ガス排出を減らすことが出来ます。それも1クリックで!「多分、一番有効でストレスフリーなCO2排出削減方法だ」と同記事のコメントでした。
ドイツの家庭で消費されている70%のエネルギーは暖房に使われていて、燃料は温暖化の原因となる石油や天然ガスです。ソーラー、ヒートポンプや地熱を利用した暖房の取り付け、窓や壁の改善にはコストがかかります。「普通の消費者ができることといえば熱エネルギーを節約することしかない。例えば、家族構成が変われば小さい住居に移る、広い空間を仕切る等、暖房を入れる部屋の面積を減らすことはできないだろうか」。
食生活
断食期間の献立に取り入れてほしいものは、季節の野菜と果物です。野菜や果物の温室効果ガス排出量は1kgに付き数百グラム足らずで、近くの市場で地産の作物を購入することにより、更にその量を20%減らすことが出来ます。牛肉生産1kgによる温室化ガス排出量は28kgです。地球温暖化の問題がなかった時代には、断食期間では肉食が禁じられていました。
交通
ドイツ人が簡単には我慢できないこと、といえば車の使用でしょう。機械の効率が良くなったのにもかかわらず、ドイツ全体の輸送機関によるCO2排出量は15年前と比べて、ほとんど変わっていません。石油価格が下落するなか、大型自動車の販売台数が増しています。ガソリンやディーゼルを1リットル消費すると、2kg以上の温室効果ガスが大気を汚染することになります。電車やバスは環境にやさしいと言われていますが、どちらも乗客率が高いことが前程です。良好な例は自転車です。平地であるベルリンでは、ドアツードアが10km以下であれば、バスや地下鉄で乗り継いでいくよりも早く目的地に着きます。都心の若者の間では、自家用車は既に流行遅れ、ダイナミックでヴァイタリティーあふれる市民は自転車通勤です。
旅行
気候保護と空の旅は両立しません。飛行機会社は燃料節約に努めていますが、世界全体の飛行機の数は増え、飛行機による大気汚染は深刻です。ヨーロッパの空を飛ぶ飛行機の数は毎日約2万7000機。フライトのチケットがますます安くなり、海外旅行者数は増える一方です。仮に一人が空の旅をやめても、空席ができるだけで飛行機は飛び、誰も得はしないと考えるのはもっともですが、その一人がもし千人になれば、旅客機の数を減らすことができるかもしれません。どうしても、飛行機を利用しなければならない場合、AtmosfairやMyClimateなどの環境保護団体に「代価」を振り込むことが出来ます。これらの団体は持続可能なエネルギープロジェクトを援助しています。「しかし、近くで休暇を過ごすことは疑いなく気候のためになる」と同記事は勧めていました。
消費
一般家庭が購入する電気製品の数は年々増えています。ドイツ連邦環境省の発表によると、その生産に伴うCO2排出量は年間45億トンに達するそうです。新しい家電を購入する前に、古い機器を修理して使用できないか調べてみること、新機器の購入が必要な場合、省エネ型を選択することなど、消費者としてCO2排出量を減らすことは意外に簡単です。
生活態度
所得が高い市民ほど、所得の低い市民に比べてCO2排出量が多いのは明らかです。と同時に「所得の高い市民こそ、気候保護のために行動するチャンスが多くあり、社会的責任を負うべきではないか」と同記事は読者に呼びかけていました。例えばファンドです。ドイツ連邦環境省の推測よると、ウインドパークを経営する企業に1万ユーロを投資すれば、CO2排出量を年間11トン削減することができるそうです。このようなファンドはリスクが高すぎると思う人は、銀行が預金をどのような企業に融資しているかを調べることです。石油企業や原発企業に融資している銀行から、グリーンエネルギーなど倫理的でエコなプロジェクトに融資している銀行に預金を移すことは1クリックで可能です。「消費者として、今まではエコ製品やフェアートレード製品を進んで選ぶことが重要だった。しかし今日では市民が団結して、政治が気候保護を促進するように活動しなければいけない。そのためには環境保護団体の会員となったり、請願に参加署名をしたりなど、個人の政治活動が重要になる。大切なのは市民が政府の行動を注意深く見守ることだ。パリ協定の気候保護はあくまでも各国の自主的取り組みであることが問題だ」とロイスヴィグ博士の言葉に続き「せっかくの市民一人ひとりの気候保護への努力が無駄にならないように」と読者へのお勧めリストは終わりました。
関連記事
南ドイツ新聞、Klima-Fasten、Robert Gast
http://www.sueddeutsche.de/wissen/umwelt-klima-fasten-1.2855939
関連リンク
Global alliance for banking on values
http://www.gabv.org/
PIK Firtz Reusswig
https://www.pik-potsdam.de/members/fritz/
MyClimate
http://de.myclimate.org/?L=0
Atmosfair
https://www.atmosfair.de/
写真参照
Stadtgemeinde Laakirchen
https://www.flickr.com/photos/laakirchen/
#KLIMAFASTEN
http://www.bundjugend.de/fasten-fuer-das-klima/
GLS銀行カード
http://www.bund.net/aktiv_werden/besser_leben/bank_wechseln/