ベテラン魔女、じゅん記者の新刊本をご紹介!『放送記者、ドイツに生きる』
このウェブサイトでおなじみの「じゅん記者」こと、永井潤子さんが本を出した。じゅんさんは、長年ドイツの国際放送「ドイチェ・ヴェレ」で日本語記者を務め、現在はフリージャーナリストとして活躍している人だ。「みどりの1kWh」の私たち魔女の中でも大ベテラン。そんなじゅんさんの新刊が出たことを、私たち一同、とても喜んでいる。今回は、じゅんさんの本『放送記者、ドイツに生きる』(永井潤子・著 未來社・刊)をご紹介したい。
私たちのウェブサイト「みどりの1kWh」は、とくに役割分担をしていないし、リーダーも決めていない。しかし、活動を続けているとメンバーの個性は出てくるもので、数値やデータに強い人、温暖化などエコロジーの問題に強い人など、何となく役割分担ができていっている。そんななかで、グループ全体のリーダーを一人選ぶとすれば、これはもう、間違いなくじゅんさんだろう。年齢が一番上で、ジャーナリストとしての経験が豊富というだけではない。じゅんさんには、人をひきつける力があるのだ。じゅんさんに「○○について、あなた、記事を書いてみない? あなたならそういうの得意だし、きっとうまく書けると思うの」なんて言われると、「そうか、がんばって書いてみよう」という気になるし、じゅんさんが「みどりの1kWh」の名刺をいろんな人に渡して一生懸命宣伝しているのを見ると、「たくさんの人にこのウェブサイトのことを知ってもらえるように、私もがんばろう」という気になる。
じゅんさんは1934年生まれの79歳。1958年からジャーナリストとして主にラジオの分野で働いてきた大ベテランだ。1972年にドイツに渡り、1999年まではドイツの国際放送「ドイチェ・ヴェレ」で日本語記者を務めた。定年後も2000年から2008年まではNHK「ラジオ深夜便」でベルリンからのリポーターを務めていたので、声を聞いたことがある人もいるかもしれない。現在はフリージャーナリストとして、日本の雑誌に最新ドイツ事情についての原稿を元気に送り続けている。『放送記者、ドイツに生きる』は、2005〜2013年に書かれた原稿を中心にまとめたものだ。「在ドイツ40年、放送記者生活50年。」という帯がついている。
じゅんさんは、これまでにもすでに日本で3冊、ドイツで1冊の本を出しているが、今回の本は、今までとは少し毛色が違う。今までの本は「日本人ジャーナリストが見たドイツ社会」といったストイックな(?)内容になっていたが、今回は、第1章が個人史になっている。女性差別のためうまく能力を発揮できなかった1950〜1970年代の日本社会のこと、1972年に初めてドイツに来たときの驚きや期待、ドイツの女性たちとの友情、人生を振り返って感じることや、日本社会への注文などがつづられている。じゅんさんのことを個人的に知らない読者でも、抑圧的な昭和の日本社会を飛び出しドイツへと羽ばたいた女性ジャーナリストの物語は興味深いのではないだろうか。
もちろん、現代のドイツ社会を知りたいという人にも勧められる本だ。ドイツに来てまだ数年しか経っていない私には、ドイツの政治家たちの横顔を描いた章がとくに面白かった。有名フェミニストのアリス・シュヴァルツァーや、ヘルムート・シュミット元首相の恋女房ローキー・シュミットのことなどは、私はじゅんさんの本で初めて知った。「じゅんさんの本を読むと政治家とか有名人も、人間味が感じられて、身近になる気がします」と言ったら、じゅんさんから「私が一番関心があるのは人間。結局のところ人間にしか興味がないのよ」という答えが返ってきた。「みどりの1kWh」のじゅんさんの記事は、情報満載で深みのある長い記事が多いが、それでも小難しくならないのは、ニュースの主役となる人間への興味に裏打ちされているからだろう。
2011年の福島の原発事故以降、ドイツ社会での大きなテーマの一つは脱原発だ。この本でもドイツの脱原発政策についての記事は充実している。そのうちのかなりの部分は「みどりの1kWh」に掲載したものであるが、本の形でもう一度読み直してみると、頭の整理になって再発見もあるなあと感じた。
また、本章とは別枠として、「ベルリン入院体験記」「ベルリン国際映画祭(2008〜2013年)」という2つの章がコラム的に設けられている。前者の入院体験記は、じゅんさん本人にとってはもちろん大変な出来事だったはずだが、軽妙な筆致でドタバタを描いているので楽しく読めるし、「病気」というフィルターを通して見えてくるドイツ社会の事情が興味深い。後者は6年分のベルリン映画祭の記録として貴重だ。映画好きには、この部分だけでも、ぜひお勧めしたい。そう言えば、今年のベルリン映画祭では、じゅんさんは、11日間の会期の間に30本くらい映画を見たと言っていた。「何だか疲れちゃったわ。もう私もトシなのよ」なんて言いながらも、何ごとも自分の目で確かめずにいられない生粋のジャーナリスト、永井潤子さん、79歳。あと30年くらいは生きて、健筆をふるってほしい。きっと、いけますよね、じゅんさん? 私たちは「魔女」なのだから!
永井潤子さんと民放で同期でした。当方がNHK国際放送英語アナウンサーに転進した後に、ドイッチェヴェレの日本語向け日本語放送担当を永年勤め、定年退職後もご活躍の由、素晴らしいことですね。今日はメルケル首相来日の記念すべき日となりました。
三澤洸さま
ありがとうございます。
永井さんに伝えます。
三澤さま、
コメント、ありがとうございました。そうです。三澤さんとは大学を出てすぐ入社した東京の民放で同僚だったのでした。貴方がNHKに移られてからも何かとコンタクトがありましたが、しばらく前のmidori1keh.deの原稿をお読みくださり、メルケル首相訪日の日に、コメントをお寄せくださったことをとても嬉しく思いました。。