再生可能電力の発電量を予測するエネルキャスト社

ツェルディック 野尻紘子 / 2014年9月14日

太陽光や風力に依存する発電の欠点は天候に左右されることだと言われるが、もし発電量が事前に予測出来たら、好都合ではないだろうか。予想外の送電網への 負担を軽減し、バックアップ用の発電量も事前に調整が出来ることになる。2012年に誕生したエネルキャスト社(Enercast GmbH)は再生可能電力の発電量を予測する会社で、予測が当たる確率は95%だという。

エネルキャスト社が、数時間後から数日後に太陽光パネルや風力発電装置で 発電される電力の量を正確に予測する基礎は天気予報だ。毎日の天気を正確に予測するだけでも容易い作業ではないのに、そこから発電装置の発電量を算出するのは更に難しいようだ。例えば、日照時間や風の速度が分かっているだけでは不十分だ。気温が上がるとソーラーパネルの発電能力は低下するが、冷たい風が吹くと能力はまた上昇する。冷たくて湿度の高い空気は強い風としてやって来るが、我々が気持ち良いと感じる暖かい風には風力発電の装置を廻す力がないこともある。また風の方向により、多数並ぶ発電装置が互いに妨げになったりすることもあり得る。太陽が燦々と照り風が多く吹けば、発電量が必ず多くなるとは限らないのだ。

同社は、具体的にはアメリカと欧州各国で発表されているいくつもの天気予報モデルを基にし、それらの予測データーを更に日に何度も実際の各地の天気測定と 比較し、集めたデーターを人口頭脳とコンピューターの膨大な計算能力を駆使して分析し、新しい天気予報を作成する。それを細分化して各地域・各地方の天気予測とし、各地に散在する再生可能電力の発電装置を考慮し、自然エネルギーの発電量の予測を算出する。これにはドイツで著名なフラウンホーファー風力・エネルギーシステム技術研究所( Fraunhofer-Institut für Windenergie und Energiesystemtechnik IWES)も協力している。

ドイツには再生可能ネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)があるので、再生可能電力は随時優先的に送電網に取り込まれる。急な天候の変化で発電量が急に増えたり減ったりするのは、送電網に負担が掛かり、停電の理由にもなりかねないので望ましくない。また従来型の火力発発電装置などは、常時電力供給の安定を保つために、自然電力が多い時には少量、自然電力が少ない時には多量の発電をする必要がある。停止から発電、或は少量発電から多量発電への切り替えに時間の掛かる発電装置の場合、余裕を持たすために、必要がなくても発電を続ける場合などもあり、無駄が多い。自然電力の発電量が正確に予測されれば、その無駄を省くことが出来て大変経済的だ。石炭、天然ガスといった資源が節約でき、不必要な二酸化炭素の排出も避けられる。

エネルキャスト社の顧客は現在の時点ではドイツや隣国のオーストリアとスイスが主だが、起業者のクラウツ氏とランドグラーフ氏は、「世界の電力需要はこれからも増え続けるので、再生可能電力は欠かせない。自然電力の正確な発電量の予測はこれから益々ウエイトを増す」と自社の将来に確信を示している。

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