省エネ住宅、  設備に頼るか、環境を活かすか

やま / 2014年7月27日

gary 1日本でもパッシブハウス、ゼロエネ住宅、プラス住宅などの言葉があふれかえっているそうですが、最近「これどう思う」と東京ある住宅建設事務所のホームページへのアドレスが送られてきました。クリックすると城壁の銃眼を思わす窓が目立つ、立方体の住宅が見られます。ドイツ語の「空間」という単語がそのまま使われていて、「ドイツの住宅のように省エネ」と客の興味を引き付けているようです。

熱損失を考えると体積に対して表面積の割合が小さい立方体は有利です。窓から逃げる熱量は大きいので、できるだけ開口面積を小さくするのも省エネ対策の一つです。「最新の照明・冷暖房・換気設備が取り入れられて、スイッチ一つで1年中快適な生活がすごせる」という広告の言葉でした。けれども、私はこの住宅を見て「手術は成功。患者は死亡?」と思わずにはいられませんでした。風土・気候条件に適した、優れた例としての日本家屋の縁側がドイツでは紹介されています。冬は低い日差しが部屋の奥まで入り、蒸し暑い夏は強い日差しを防ぎ、風を通してくれます。縁側は外と中がつながる空間であるだけではなく、家と生活環境とのコミュニケーションの場です。縁側とその幅いっぱいに設けられた窓を省エネと防犯のためとはいえ、小さな窓に取り替える施主がいるのかと私は不思議に思いました。

光、空気、太陽を取り入れるのは窓、それとも設備?

gary 2“人が居る”部屋につける窓の最小限の大きさがドイツでは建築基準法で決められています。(ベルリンでは部屋の面積の1/8です)。普通イスに座り外を眺めることができる高さに窓の位置があります。こちらの感覚では、気持ちの良い部屋とは窓が開いて外から新鮮な空気が取り込める空間です。ところが省エネ時代の現在、ドイツでも“気持ちの良い部屋”が“快適な部屋”に変わり、窓を開かなくても換気ができます。住宅をデザインしなくても断熱材と設備を設置すれば省エネ基準値を得ることは可能です。今や「形態(住宅)は省エネに従う」そして建築家はいらないのでは? ちなみにドイツパッシブハウス研究所所長は物理学者です。

初めに環境を活かす、それから設備

断熱材の厚さや設備だけに頼ることは、住宅設計を技術者だけに任すことになると反省したのは建築界でした。「これ以上省エネ基準を厳しくするのは無意味。最新の設備は建築構造とは違い短命だ。我々は風土・気候条件に合った住宅を設計し、それから暖房や換気設備を付け足すべきだ」とドイツ建築家連盟 (BDA、Bund deutscher Architekten) ベルリン支部では建築家の役割を明らかにしました。ドイツと同じ気候地帯にあるオーストリアに去年、暖房と換気設備を放棄した6階建てのオフィスビルができ建築界の関心を集めています。外壁は伝統工法であるレンガ構造で、グラスウールや発泡スチロールなどの断熱マットを張った断熱複合システムを使用していません。

住宅の現状を見ると、ベルリンには現在約190万世帯の住宅があり、170万世帯は集合住宅です。「賃貸住宅の町」と呼ばれているベルリンでは住宅建築物の86%は賃貸です。中心地の人口が増え、都心の密集化を進めていますが、家賃及び売買価格が上がり、住み慣れた地域から住民が追い出されるジェントリフィケーションが始まっています。住宅設計のあるべき姿は、最新の設備が必要な省エネではなく、都市環境の要素を考慮したうえでの総合的な都市開発にあるというのが建築連盟の意見です。

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ハイテク設備に頼るのではなく、窓を開いて風を通すというローテクな省エネ住宅を実現させる生活環境の大切さを市民が認識する必要があるのではないで しょうか。

 

 

左の写真は:
ウェブサイト、flickr
写真家、svenwerk
項目、Berlin, Karneval der Kulturen、から

 

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