ドイツの再生可能電力、昨年は石炭火力を抜いて全発電量の40%?

ツェルディック 野尻紘子 / 2019年1月6日

ドイツのフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(ISE、Fraunhofer-Institut für Solare Energiesysteme)が、年が明けたばかりの1月3日に、2018年のドイツの再生可能電力がドイツの全発電量に占める割合は40.4%に達したと発表した。これは石炭火力発電の38.2%を抜いたことになる。ISEは、昨年のドイツの再生可能電力の発電量を前年比4.3%増の2190億kWhとしている。昨年はドイツの天候が異常なほど良く、日照時間が特別長かったことが影響したようだ。

ベルリンの郊外でもよく見かけるようになった太陽光発電設備。良い天気の続いた昨年は大活躍した。

 

このISEの発表で少し驚くことがある。というのは、このISEの数値は、ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW、Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)が昨年12月19日に発表した2018年の予測値とは大きく異なっているからだ。BDEWによると、ドイツの再生可能電力が全発電量に占める割合は2017年の33%から2018年には35%に増えた。一方、石炭火力発電は2017年の37%から2018年には35%に減った。つまりBDEWは、ドイツでは昨年、再生可能電力と石炭火力の発電量が初めて同じになったと発表しているのだ。

両者はそれぞれ権威ある信頼できる組織とされている。しかし40%と35%では5%もの差がある。その違いの原因を「フランクフルター・アルゲマイネ」紙は、次のように説明している。「BDEWがドイツ全国で発電される全ての電力を考慮しているのに対して、ISEは、ドイツの公共の送電網に取り込まれた電力だけしか考慮していない」。ということは、ISEの数値の中には、メーカーなどが工業用に自家発電して自身で消費している電力は含まれていないという意味だ。同紙は、この工業用電力の発電量は全発電量の10%に当たると書いており、ISEの数値ではその分、再生可能電力が過剰評価されていると指摘している。

このISEの、再生可能電力が全発電量の40%を超えたという発表は、マスメディアで一部大きく取り上げられているが、実際には、BDEW とISEが異なる物を基準としていることに注意する必要がある。例えば、ドイツ政府が、再生可能電力の割合を2030年までにドイツの全発電量の65%にまで上げたいと掲げている目標の中には、工業用などの電力も含まれる。従って、今回ISEの発表した数値は、気をつけて扱わなければならない。しかし、ドイツで再生可能電力が大きく増えていることを示す証拠にはなる。

 

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