ドイツの発電量、多過ぎ!
ドイツが昨年隣接国に輸出・提供した電力は過去最高で、隣接国から輸入・受容した電力を230億kWh上回った。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW)の発表による。これは前年2011年の80億kWhの約3倍に相当し、今までの過去最高だった(原発8基停止以前の)2008年の223億kWh以上になる。国外に流れる電力には通常対価が支払われ輸出となるが、この中には無償で国外に流れた電力や、逆に対価を支払って外国に受け入れてもらった電力も含まれるため、一概には喜べない。このような利益に繋がらない余剰電力は、気候差で発電量が大きく揺れる太陽光や風力による再生可能電力のために、ドイツの送電網が一時的に計画外の電力で満杯になった際に発生する。
送電網が満杯の際、余剰電力は物理的に抵抗力の最も少ないところに流れて行く。再生可能電力は発電状況が良好なとき、つまり風が強く吹き太陽が燦々と照るときに多量に発電されるため、そういうお天気の日には電力の“計画しない輸出”や“マイナス価格”が起こりやすい。マイナス価格とは、お金を払って電力を引き取ってもらうことを意味する。ドイツでは 再生可能エネルギー優先法(EEG)のために、再生可能電力は買い手がいなくても、送電網に送り込まれる。このためライプツィヒの電力取引所では昨年、 電力を受け入れてくれる会社にお金を支払った日が合計で15日あったという。
例年、クリスマスの12月25日は、日本の元旦のように学校も会社も休み、お店も開かないため電力の消費量は減る。ドイツの大手電力会社は昨年もほぼ例年通りの電力を計画通り発電した。しかしその日は12月にしては暖かく、珍しく強い風も吹き、電力が20%も余ってしまった。そこで通常なら1000 kWh当たり30–60ユーロで取引される電力を、企業は474ユーロで買ってもらわなければならないという状態が発生した。電力会社の損失はこの日だけで2800万ユーロ(約33億円)に達したと報道されている。
BDEWは、どれだけの電力が計画された輸出で、どれだけが計画外の輸出だったかは区別できないと言う。ドイツの隣接国であるポーランドは、ドイツから流れてくる計画外の電力は同国の送電網の安定性を妨げるとして長らく苦情を述べていた。そこで昨年末、ドイツ側でポーランドの国境に接する地域の送電網を運営する50ヘルツ 社と、ドイツからの好ましくない電力を遮断する技術的なバリアーを設置することで契約を結んだ。チェコも50ヘルツ 社と同様の契約を結ぶ予定だそうである。
ドイツで大量の再生可能エネルギーが発電されることは、欧州市場での電力価格にも影響を与えている。例えば、増え続ける太陽光発電の影響で、電力消費量が最も多く、従って以前には電力価格が最も高かった正午前後の電力価格が現在では下がっている。このため日中の高価格で採算を取っていたガス火力発電装置の採算性は合わなくなり、ドイツ国内やオランダで、ガス火力発電所が廃炉されるケースが増えているという。オランダへの電力輸出は昨年、前年比で17.5%も増えている。一方この影響で、二酸化炭素の排出量は多いが価格が低く競争力のある褐炭を燃やす火力発電所での発電量がドイツで増加していることも事実だという。
「オランダでは電気料金が下がり、ドイツでは(EEGなどのために)電力料金が上がる」とBDEWの経営責任者であるミュラー氏はこぼす。彼女は「昨年の数値は、各方面から求められているようにEEGの改正が必要性なことを裏付けている」と強調している。
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