静岡からのお土産 その2

やま / 2011年9月15日

「お茶のセシウム制限値は500Bq/kgですが、このお茶の場合は下回ります。でも他に飲む物があるならばこのお茶は飲まないほうがいいでしょう」と告げられ、電話が切れました。ベクレルとかセシウムと聞くと何か不安を感じます。私達は経験を重ねて危険を見分けるようになります。例えば子供がアイロンを熱いと感じるのがそうです。見えない、臭わない、味もしないセシウムの害は観念的で漠然としていて、そうはいきません。チェルノブイリ原発事故以来、常に耳にする単位ベクレルですが、具体的に何を表すのか、体にどのような害があるのでしょうか。それを説明できるのは友人のFだと思い、環境都市として有名なフライブルグへ彼を訪ねたのはプラムケーキの美味しい季節でした。Fは物理学者で、放射線科医としてフライブルグ大学病院に勤めて、放射線による癌治療をしています。

「400ベクレルという数が気になり、せっかくのお茶が楽しめない」と話す私に、Fは「検査の結果を軽視するつもりはないけれど」と素人にも理解できるように、この数値を分析してくれました。

400Bq/kg とは1キロ当たり400ベクレルのことです。これを1グラム当たりに直して計算すると0.4ベクレルとなります。一杯につきお茶を2グラム使いますから、2g x 0.4Bq/g で約1ベクレル。それは、1秒につき1つの原子が崩壊するという意味です。このような原子の活動は極めて小さく、普通ほとんど測定できない程。なるほど、そう言われてみると、彼の言うとうり、飲んでも確かに問題はないということが理解できました。ベクレルというのは放射能の量を表す単位で、お茶が缶に入っていても、熱いお湯で入れても、飲んで身体の中に入っても原子核が崩壊する量は変わりません。

25年前はどれぐらいのベクレルの数値が問題されていたのでしょうか。その当時の日記を開いてみました。ベルリンから1000キロメートル以上も離れているチェルノブイリ原発が爆発したのは4月26日。

4月30日 「牛乳が放射線で汚染され、飲めなくなるのでは。草も芝生も危ない!」

5月6日 「4月28日以降に生産された乳製品は幼児には与えないように。特にそのような乳製品を食べた母親は母乳を赤ちゃんに飲ませないように」「今日は粉ミルクの売り切れ、昨日買っておいて良かった」

5月18日 「反原発デモに参加、子供連れが目立つ」

6月20日 その当時8ヵ月半だった長女の定期検診。「これから粉ミルクではなく是非牛乳を飲ませるように。牛乳を飲んで抵抗力を付けることは今のような時代には一層大事です」と先生に言われました。ビオ製品の牛乳の中にはヨード131が2ベクレル、セシウムが6ベクレルで、大丈夫だろう。

ドイツではベクレルが、日本ではシーベルトが良く使われていています。簡単に言えばベクレルは線量、シーベルトは放射線の強さを表します。F いわく、ベクレルだけでは人体が受ける放射線の影響や害は表せない。「もちろん原則として、なるべく放射線は避けるべき。とは言ってもこのような細かい数値 (お茶1杯当たり1ベクレル)にこだわるようでは、この近くの保養地シュヴァルツヴァルトでは休暇は過ごせない。害になるから飲まないほうがよいという発言は少し大げさでは」とF。放射能線について知識と経験豊富なF だからこそ、原発には賛成できないとの意見でした。

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