3ヶ月前に就任したばかりのドイツのアルトマイヤー新連邦環境相との記者会見に出席した。メルケル首相による前任者の更迭で思わぬチャンスが回って来たことが嬉しいのか、各方面から「ヘラクレスの大仕事」、「ドイツ統一にも匹敵する大事業」などと言われるドイツのエネルギー転換に自分が貢献出来る事を喜んでいるのか、仕事が楽しくてしょうがないというような印象を与える人物だ。この会見は外国人記者が対象で、日本の大手メディアからも数人の記者が参加していた。質疑応答形式で行われ、種々質問が出たが、内容に制限はなかった。みどりの1kWhで既に紹介して来た内容の返答も多かったが、以下にまとめる。 続きを読む»
ドイツ連邦議会は、今年6月29日から9月11日まで夏休みでした。この時期、動かないのは政治だけではなく、劇場や交響楽団、ギャラリーなどの文化界、ブンデスリーガなどのスポーツ界もシーズンオフで、ドイツは冬眠ではなく夏眠状態といった感じです。いつもはさまざまな政界の動きを伝えるニュース番組も、この時期には伝えることが不足するため、いわゆる”夏の穴を埋める話”といわれるような、とりとめのない話を扱います。
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旧西ベルリン中心、カイザー・ヴィルヘルム記念教会の建つ広場から目抜き通りクーダムを西へ徒歩30分、えんじ色から紺に輝くレンガの流線形が目立つ建物「シャウビューネ劇場」があります。かつて映画館だったこの劇場は、表現主義の代表的建築家であるエーリッヒ・メンデルゾーンの1925~1931年の作品です。ネットで手ごろなアトリエを探していると、「クーダム、重要文化財、設計者メンデルゾーン、ワンルーム・マンション」という物件が目に入りました。シャウビューネ劇場には何度か観劇に行ったことはあるのですが、裏に当たるブロック内に、彼の設計した集合住宅があるとは意外でした。そしてこの建築の由来を調べてみると、ベルリンの歴史の流れに触れたような気がしました。 続きを読む»
4月上旬に「電気を市民の手に - 動き出した『ベルリーナー・エネルギーティッシュ』」という記事を書いたところ、4月下旬にドイツの新聞、ラジオ(因みにドイツのラジオ放送は日本と比べてはるかに重要な情報源である)などが「ベルリン市民エネルギー(BEB, BürgerEnergieBerlin)」という名称を持つエネルギー協同組合の活動を取り上げた。それらの情報によると、2014年12月31日でベルリン市と大手エネルギー供給会社ヴァッテンファル社との配電網に関する営業認可契約が切れるのに伴い、配電網を運営する組織として「ベルリン市民エネルギー」が名乗りを上げたという。配電網の営業権を買い取り、そこから生まれる利益を、出資した市民に還元することを目的としている。 続きを読む»
2年ぶりに日本へ里帰りしてきました。滞在中、日本ではいろいろなことがありました。1995年の地下鉄サリン事件に関わり、潜伏していた元オウム心理教信者、高橋克也容疑者の逃亡と逮捕、消費税増税法案をめぐる激しい議論と民主党内での造反、オスプレイの沖縄普天間基地配備問題、松田聖子さんの3度目の結婚、などなど。でも、みどりの1kWh視線の私にとって一番の注目の的は、大飯原発第3、第4基の再稼動をめぐる動きでした。6月16日、上京した福井県の西川一誠知事が野田首相に再稼動への同意を伝える、何かの儀式のようなニュースの映像を、私はなんとも不思議な感じを覚えながら見ていました。
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気がついたらもう1年が経つ。ドイツ政府が 脱原発の方針を閣議決定したのは、去年6月6日だった。国内に17基ある原発のうち福島の原発事故後早々と運転を停止した8基の再稼働はせず、そのまま閉鎖、残りの9基は2015年、17年、19年に1基ずつ操業停止、2021年に3基、2022年に最後の3基も止めて全廃するという脱原発に向けての具体 的な行程表が決定された。同時に核エネルギーに代わって風力など再生可能な自然エネルギーへの転換をはかって行く方針も決められた。この政府案をドイツ連邦議会が激しい論議の後賛成多数(賛成513票)で承認したのが、6月30日で、歴史的な決定とみなされた。反対票(79票)の多くが「11年後に脱原発 を実現するという政府案は時間がかかりすぎる」という理由での反対票だった。ドイツの憲法である連邦基本法に脱原発を明記するべきだと主張した左翼党の議員たちもその要求が入れられなかったため反対票を投じたが、脱原発そのものに反対した議員はごく少数だった。この日、原子力法や再生エネルギー法改正案など8つの関連法案が連邦議会を通過し、7月8日、連邦参議院もメルケル内閣の脱原発の方針を承認、法的手続きがすべて完了した。福島第一原発の事故から 3ヵ月あまりのスピードぶりだった。 続きを読む»