脱原発、必ず成功

「ドイツで脱原発の決定が覆るなどとは考えられない。そんなことは誰も思ってもいない」と力強く話すのはドイツ・エネルギー・エージェンシー(dena)のシュテファン・コーラー氏だ。ドイツ政府とドイツ有力銀行の共同出資で2000年に設立され、政界と経済界の接点で活躍するエネルギー問題コンサルタント会社の社長を務める。「2002年に政権に就いていた社会民主党(SPD)と緑の党が脱原発を決定した際には、各原子力発電所の残りの発電量が決まっただけで、全ての原発がいつ停止するかははっきりしなかった。発電大手もたいして本気にしていなかった。しかし今回は異なる。政党の壁を超えて、ほとんど全ての連邦議会議員が脱原発を支持しており、それに真剣に取り組んでいる」。国民の総意も脱原発だ。だから脱原発は成功しないわけがない、と言いたいのだろう。外国人記者協会の話し合いで、同氏に脱原発の行方について聞いた。

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前進する脱原発

日本では最近「ドイツの脱原発はうまくいっていない」と喧伝する人が増えているという。雑誌などでも「原発ゼロ懐疑論」が目立つとか。例えば、「ニューズウイーク」日本版の10月31日号は「脱原発のコスト」という特集を組んだが、そこには「原発維持を決めたフィンランド、脱原発を疑いはじめたドイツ」、「脱原発の優等生ドイツの憂鬱な現実」、「脱原発の『手本』ドイツの行き詰まり」といった見出しが並んでいる。エネルギー転換はエネルギー革命と言われるほどの国家的大事業であるため、確かに緊急に解決すべきさまざまな問題を抱えてはいる。しかし、現地で暮らし、ドイツのメディアを見ている私には、少なくとも「脱原発を疑いはじめたドイツ」という雰囲気は感じられない。実際はどうなのか、検証を試みる。

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ドイツFIT(固定価格買取り制度)誕生秘話と歩み

ドイツで電気料金に上乗せされる再生可能エネルギー促進のための賦課金がこの10月、今年の1kWh当たり3.59ユーロセント(約3.6円)から来年は5.28ユーロセント(5.3円)に値上げされると発表された。それ以来、あちこちから電気料金の高騰を心配する声が上がる一方、 2000年4月に施行された再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)の存在が疑問視されだした。この法律は再生可能エネルギーの発展に大きく貢献し、世界60カ国以上でお手本となっているのだが、再生可能エネルギーの固定価格買取り制度と賦課金算出の根拠でもあるからだ。この法律はどんな経緯で誕生したのだろうか。そしてどんな道をたどって来たのだろうか。その歴史を顧みてみると、ドイツで脱原発が可能になる背景が見えてくる。

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曲がり角に来た再生可能エネルギー優先法

ドイツで2000年4月に施行された再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)が曲がり角に来ている。太陽光や風力などで発電した再生可能電力を設置時の固定価格で買い取り、火力や原子力で発電したエネルギーより優先的に送電網に送り込むことを定めたこの再生可能エネルギー促進のための法律が、電気料金を高くする要因の一つとなっているからだ。また、再生可能電力を促進するための賦課金が公平に負担されていないとう批判もある。年間の電力消費量が3500kWhとされる3人家族の一般ドイツ家庭の今年の電気料金は875ユーロ(8万7500円)程度になる見込みだが、このうちの賦課金は約125ユーロ(1万2500円)に達するといい、来年は更に増加するとされる。再生可能エネルギーの促進に大きく役立って来たEEGではあるが、改正や廃止を求める声が挙がっている。

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ドイツ風電気料金高騰への対処

最初の脱原発を決定したのが2002年、福島の事故を受けて改めて脱原発を決めてから1年半近くが過ぎようとしているドイツ。一瞬、脱原発を決めたけれども、「舌の根も乾かないうち」に脱・脱原発にぐらついている日本。そしてドイツを取り巻くヨーロッパ諸国では、脱原発で足並みがそろっているわけではない。福島以後、方針は決まったものの具体的な対策を模索しているドイツではあるが、脱原発と電気代の高騰をめぐる議論はずっとメディアを賑わしている。とくにここ数日、議論は熱を帯びているが、それは再生可能エネルギーの賦課金が現在の1キロワット時3.6ユーロセントから5.3ユーロセントに値上げされ(最終的に正式な数字は10月15日に発表される)、平均的世帯にとって年間50ユーロから60ユーロの電気料金の値上げがニュースになったからである。 続きを読む»

自然エネルギー発電、25%を突破

シリア危機、ユーロ危機、欧州危機でドイツの格付けは「ネガティブ」に、といったニュースが支配的だった7月末、「自然エネルギー発電の割合、25パーセントを突破」という明るい知らせが届きました。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟の推定によると、今年前半、ドイツ発電量で自然エネルギーの占める比率が初めて4分の1を上回りました。その発電量は去年に比べて4%増加して67.9TWh(1テラワット時=1,000ギガワット時)。その中では風力発電が9.2%を占めて、例年と同様、最重要自然エネルギー源となっています。再生可能エネルギーと呼ばれる自然エネルギーが、今までトップだった石炭を追い越したのも今回初めてだそうです。2020年までにこの比率を35%まで伸ばすのがドイツ政府の方針です。
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