ドイツ政府はこのほど、半年以上前から予定されていた「国家水素戦略」を決定、発表した。水素は、消費の際に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出せず、用途の幅が広く、運搬と貯蔵も比較的容易で、将来のエネルギー源として世界中の工業国から大きな期待が寄せられている。地球上に無限に存在し、枯渇の心配がないことも魅力的だ。国家水素戦略は、コロナ危機による景気の落ち込みの回復を目指すドイツ政府の景気対策・経済振興策の一環として6月初頭に発表され、70億ユーロ(約8400億円)という巨大な規模のものだ。
続きを読む»
ドイツではこのほど、コロナ危機で落ち込んだ消費や投資の回復を目指す総額1300億ユーロ(約16兆円)にのぼる新たな景気対策が発表された。連立与党のキリスト教民主同盟(CDU)とそのバイエルン州の姉妹政党、キリスト教社会同盟(CSU)、それに社会民主党(SPD)の首脳部は、2日間にわたる困難な話し合いのあと、6月3日夜遅く、今年下半期、付加価値税(日本の消費税に当たる)を3ポイント引き下げるなど一連の景気回復策で合意に達した。これはコロナ危機対策であると同時に未来を目指した経済振興策でもある。また社会的弱者にも配慮した景気対策だと連立与党は主張する。これを受けてメルケル政権は6 月12日の臨時閣議で、この案の主要部分を承認した。
©️Bundesministerium der Finanzen
続きを読む»
季節感を大切にする和食と違って、ドイツにはあまり旬の食材がない。そんな中で特別な存在が、白アスパラガスだ。4月中旬、ドイツ産の白アスパラガスが店頭に並ぶと、私たちは長い冬が終わり、ようやく春が訪れたことを実感する。白アスパラガスの旬は夏が来るまでの約2ヶ月間で、新緑が日々濃くなり、ライラックやシャクナゲなど春の花が順番に咲き乱れるドイツで最も美しい季節とちょうど重なる。だから余計、ドイツの人たちは白アスパラガスを心待ちにするのだろう。ところが今年は、その白アスパラガスを例年のように楽しめるかどうかが危ぶまれるという事態になった。コロナ禍のせいだ。
続きを読む»
©️European Union 2020 Source: EP/ Daina LE LARDIC
欧州連合(EU)は5月27日、コロナ危機で大きなダメージを受ける加盟各国の経済復興基金として7500億ユーロ(約90兆円)にのぼる大規模な基金の創設を提案した。この案は、実現すれば欧州の財政統合にも繋がる歴史的な第一歩とみなされている。EUの復興基金案は、5月18日にフランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が合意した「EU復興基金設立のための共同提案」の方針をほぼ取り入れた内容だった。独仏両国は歴史的にヨーロッパ統合の推進役となってきたが、今回独仏両国がようやくマクロン大統領の考えに沿った共同提案で合意できたのは、メルケル首相が180度の方向転換をし、これまで反対し続けてきたEU共通債務を認めたことで、はじめて可能になった。 続きを読む»
今年5月8日、ドイツはヨーロッパでの第二次世界大戦終結75周年の記念日を迎えた。ドイツ16州のうちベルリン州だけは、これを記念して、この日を臨時の祝祭日とした。本来は第二次世界大戦で敵国として戦い、今では友好国となった国々やナチスドイツが多大の被害を与えた国々の代表、そしてそれらの国々の若者も含めて何千人もの人を招いて、75年前の戦争の終結とその後の平和を祝う記念式典を開く予定だった。首相官邸から旧帝国議会の建物(現在の連邦議会)までの間の広場では、一般のドイツ人も交えて戦争と平和に関する思索的な歴史の授業が大々的に繰り広げられることになっていた。しかし、予期しなかったコロナ危機のため全く違った形になった。
ノイエ・ヴァッへの前で行われたシュタインマイヤー大統領の演説(中継したphoenixの画面から)
続きを読む»
新型コロナウイルスの拡散を防ぐために実施された規制措置が、ドイツの憲法である基本法にうたわれている行動の自由や集会の自由などの基本的権利を制限するとして、それに反対する人たちのデモが数週間来続いている。ここにきて、そのデモに極右や「新型コロナウイルスは疑わしい権力の陰謀だ」などと主張する人たちが大勢便乗参加し、規律を乱したり暴れたりして問題を起こしている。更に、行動を束縛されて不満に思ったり苛立ったり、あるいは自分の将来を心配したりする市民もそれに加わり、各地の大都市の広場で抗議運動を展開している。これが大きな社会問題に発展する可能性は少なくない。
続きを読む»