日本の「脱原発決定」をドイツのメディアはどう伝えたか

野田政権は、9月14日、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す新しいエネルギー政策「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。福島第1原発事故の後「脱原発」の世論が高まったのを受けて、これまでの原発政策を大きく転換させたものだ。しかし、「40年で廃炉の基準を厳格に守る」「原発の新増設はしない」とする一方で、「原子力規制委員会が安全を確認したもののみ再稼働させる」として、再稼働を認める方針も明記した。また、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電量を30年までに3倍にするとしながら、具体的な行程表は示されないなど、不十分で矛盾した点も見られる。それにもかかわらず世界第3位の原発大国、日本が脱原発宣言を行なったことは、国際社会に強い印象を与えたようだ。ドイツのメルケル首相は9月17日にベルリンで行なった内外記者との会見で「日本の脱原発の決定を歓迎する」と述べ、「再生可能なエネルギーの導入やエネルギーの効果的な利用、送電網建設などの問題で我々の経験を交換し、この分野で日本との協力を一層強化していく」考えを明らかにした。以下、日本政府の脱原発決定について9月15日のドイツの新聞論調をお伝えする。 続きを読む»

「何も学ばず」

7月5日に国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が、同23日に政府事故調査委員会が最終報告を公表したのを受け、日本の新聞雑誌ではこの2つの報告に加え、東京電力と民間のもの、計4つの報告を比較する記事が多く見られるようだ。7月6日の南ドイツ新聞は、5日の国会事故調査委員会の国会での最終報告について、「罪と無知−調査報告によれば、福島原発事故は日本政府と東電の責任」という大きな記事を掲載した。事故から9日後に空中から撮影された、福島原発の痛々しい写真も大きくあり、”廃墟の風景”というキャプションがついている。

続きを読む»

どう知らせる核廃棄物の貯蔵所 - 学者らが討議

誰も知らない、10万年も昔に地下に設置された核廃棄物貯蔵施設を、資源のありかを探る最先端のボーリング機が偶然掘り当ててしまい、放射性物質が地下水や辺り一面を汚染したとしたら!  そんなことが将来起こるのを、今の私達はどうすれば防ぐことが出来るのだろうか。10万年も放射能を放出し続ける核廃棄物の貯蔵場所を、将来の世代に伝えるにはどうしたら良いのか。その問題を考える学者たちが、このほどダブリンに集まり意見を交換した。7月18日付けのベルリンの日刊紙「ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)」が報道している。

続きを読む»

2度目の脱原発 - ドイツの電力会社の決断

6月18日付の南ドイツ新聞の経済面に「2度目の脱原発」という見出しが書かれていた。2度目というのはどういうことかと疑問に思いながら読むと、ドイツの大手エネルギー企業であるRWE社が、ドイツ国内に次いで、外国での原発事業から撤退するという内容だった。そして6月18日付のオンライン版シュピーゲルも「方針転換」という見出しで、RWE社が原発事業から撤退することを報じていた。これらの報道の内容と、これに対する反原発運動団体の反応を紹介しよう。

続きを読む»

プラスチック・プラネット、その2、奇妙な現象

南ドイツ新聞のウィークエンドマガジンの見出しに関心を持ちました。「もう始まった?なぜ現代っ子の性成熟期、思春期が早いのか?9歳で胸が膨らみ、10歳で恥毛が。学者たちでも謎が解けない。原因は食生活、ストレス、それとも他に?」もしかして、ここにもプラスチックに使用されているビスフェノールAの影響があるのではないかと、ふと思いました。(”人体は終着駅”、BUNDはこのパンフレットで環境ホルモンから子供を守ろうと呼びかけている)

続きを読む»

エネルギー転換に必要な技術、まだ未開発

「ドイツ政府の決めたエネルギー転換が成功するために必要な技術はまだ開発されていない」と挑発的な発言をするのは微生物学者で著名な科学評論家でもあるハレ市在の生物学安全研究所(Institut für Biologische Sicherheitsforschung)の所長、アレクサンダー・S・ケクレ(Alexander S. Kekulé)教授だ。このところ倒産などに直面しているドイツの太陽光発電業界の問題も、斬新な技術の欠如が主因だと指摘する。
ケクレ教授は、先頃決定された再生可能エネルギーに対する政府の補助金削減を当然だとする。なぜなら、ドイツの太陽光発電業界などが直面する苦境は、大半が自ら招いた結果だからだ。手厚い補助金があるため、例えば、どの会社も価格的に世界市場で 競争出来る太陽光パネルを生産しようと真剣に努力して来なかった。毎年数千万ユーロの補助金を得ているにも関わらず、ドイツ企業は以前には保有していた科学技術面での世界的なリーダーシップも失ってしまった。 続きを読む»