Author Archives: 永井 潤子

欧州議会選挙で注目される気候変動

「ヨーロッパは、完全ではない。しかし、それは とてつもなく素晴らしいスタート台、集まれ!一緒に新しいヨーロッパを作ろう」—緑の党の共同代表ローベルト・ハーベックの大きな写真が載った立て看板には、こう書かれている。ハーベックは将来の連邦首相候補の一人と目される人気上昇中の政治家である。欧州議会選挙を前にしたベルリンの街には今、政治家の顔写真入りの立て看板やポスターが溢れている。

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ワイマール共和国って何?

国民議会が開かれたワイマールの国民劇場と、ゲーテ(左)とシラー(右)の像

今年はワイマール共和国100周年がいろいろな意味で祝われている。しかし、ドイツの歴史に馴染みのない一般の日本人、特に若い人たちの中には、ワイマール共和国がどういうものか、はっきり知っている人は少ないのではないだろうか?最近ある若い日本人女性から「ワイマール共和国って、ワイマールが首都だったのですか?」と聞かれた。日本語のヴィキペディアに、ワイマール共和国の首都はワイマールとベルリンと書かれているのも見つけた。だが、ワイマールがドイツの首都だったことは1度もない。そこで、ドイツ最初の共和国がなぜ、ワイマール共和国と呼ばれるようになったかについて、説明しようと思う。 続きを読む»

『奪われたクリムト』に心を奪われて

世紀末ウイーンを代表する画家、グスタフ・クリムトの大規模な展覧会が、東京・上野にある東京都美術館で4月23日から始まり、話題になっているようである。全く偶然なのだが、私が、友人の浜田和子さんと訳した『奪われたクリムト、マリアが黄金のアデーレを取り戻すまで』が、この展覧会に期を合わせたかのように、梨の木舎から出版された。なぜ私たちがこの本を訳したいと思ったかをお伝えしたい。 続きを読む»

欧州議会、使い捨てプラスティックの使用禁止を決定

©️Marco Verch

ストラスブールにある欧州議会は、3月27日、使い捨てのプラスティック製のストロー、ナイフやフォーク、コップなど10品目の生産や販売を2021年以降禁止するという基本方針を、賛成560票、反対35票、保留28票の圧倒的多数で最終的に承認した。欧州連合(EU)加盟各国は、この基本方針に沿った国内法を2021年までにそれぞれ制定しなければならないが、法制化が整えば、2021年以降ヨーロッパの市場から、これらの使い捨てプラスティック製品が姿を消すことになる。 続きを読む»

政治の世界で完全な男女平等を目指す「パリテート法」ーブランデンブルク州の決定

「パリテート法」の成立を喜ぶブランデンブルク州議会の女性議員たち©️Landtag Brandenburg

2019年1月31日は、ドイツの女性史上画期的な日となった。この日、ベルリンをとりまくブランデンブルク州の州議会が、政治的に完全な男女平等を目指す「パリテート法」を採択したのだ。パリテートというのは、同等とか同じ割合という意味で、この法は「候補者均等法」と訳せるだろうか。この法律が効力を生じるのは2020年6月だが、それ以降はブランデンブルク州議会選挙に候補者を立てる全ての政党が、比例代表のリストに男女同数の候補者を立てなければならなくなる。ドイツでこうした法律を制定したのは、この州が最初である。しかし、この法律が成立したことが、さまざまな波紋を投げかけている。 続きを読む»

石炭・褐炭火力発電からの撤退に関する「石炭委員会」の歴史的な合意

気候温暖化防止対策が緊急課題となっている現在、ドイツのエネルギー転換にとって最も重要な課題は、二酸化炭素(CO2)を大量に産出する石炭、特に褐炭による火力発電から早期に撤退することだと考えられている。しかし、今なお何万人もの人が褐炭採掘に従事しており、そうした労働者の雇用の維持と、褐炭採掘以外に主な産業のない地域の構造改革の必要性が叫ばれている。こうした事情を受け、ドイツ連邦政府が去年6月に発足させた「成長、構造改革、雇用」に関する委員会、通称「石炭委員会」が、このほど、遅くとも2038年までに、早ければ2035年までに、石炭・褐炭による火力発電から撤退するよう求めた勧告案をまとめ、連邦政府に提出した。 続きを読む»