メルケル首相の素早いエネルギー政策転換
日本時間の2011年3月11日14時46分、ドイツでは早朝の6時46分、この時を境に世界は変わった。
大災害の報道が伝えられた直後の3月12日に早くも大規模な反原発デモが行なわれたことは1)で伝えたが、メルケル首相も市民の反応に負けず劣らず、素早い動きを見せた。実は第二次メルケル政権は社会民主党と緑の党の連立政権だったシュレーダー政権がいったん決めた脱原発の方針を昨年9月にくつがえし、古い原発の運転期間を8年、1980年以降に運転を開始した比較的新しい原発の運転期間を14年、平均で12年間延長して、原発反対派の人たちの激しい反発を買っていたのだが、そのメルケル首相がこれまでの原子力政策を180度転換するような発表をして、人々を驚かせた。
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体調を崩して寝込んでいて、ベッドの向かい側にある本棚をぼんやり眺めていた時だった。突然分厚い本の表紙に書かれた「廃炉に向けて」というタイトルが目に飛び込んで来た。慌ててその本を手に取ると、それは1986年のチェルノブイリ事故の後にサイエンスライターで環境問題・平和問題研究家の綿貫礼子氏が女性の立場から原発の危険に対して警鐘を鳴らして編集した、学問的にも非常にレベルの高い本だった。
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世界でただ一つの「おむつ発電所」が、ドイツにある。その名も「おむつヴィリー」(Windel-Willi) というこの発電所は、南ドイツのボーデン湖に近い小さな町、人口1万3000のメッケンボイレン(Meckenbeuren)で、5年前に誕生した。高さ11メートルの特別仕様の火力発電所、ヴィリー君は、現在、年間3800トンの使用済み紙おむつを燃やして1240キロワットのエネルギーを生み出している。「このエネルギーで毎日8トンの洗濯をするクリーニング工場に熱湯を提供し、社員食堂で毎日3000食をつくり、8つの温室(延べ面積、9万6000㎡)の暖房をするなど、生み出されたエネルギーは100%利用されています」こう話すのは「おむつヴィリー」の生みの親、技師のマルコ・ナウエルツさんだ。ヴィリーは年間4200トンのおむつを燃やす能力があり、今年中には、フル稼働する見通しだという。
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福島第1原発の複数炉の事故に世界でもっとも敏感に反応したのは、ドイツの市民とマスメディアと政府だったと言えよう。物理学の博士号を持つメルケル首相は悲惨な事故を目にして原発の安全性について矢継早の対策をとった後、脱原発の方針を固めた。段階的に原発を廃止して2022年までにすべての原発から撤退するという保守・リベラル連立政権の方針を、連邦議会が賛成多数で承認したのは福島原発の事故からわずか3ヶ月あまりというスピードぶりだった。ドイツの脱原発の決定は、長年にわたる反原発の市民運動、緑の党や社会民主党を中心とする脱原発の政治的運動抜きには考えることができない。そのプロセスについて日本のマスメディアであまり詳しく報道されなかったということなので、数回にわたってお伝えすることにする。
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