コロナ禍での日本一時帰国体験記

コロナ•ウイルスの変異株が世界各地で猛威を振るっている中、ドイツでは国外はもちろん国内旅行も控えるように言われている。しかし止むを得ぬ事情があって、私は日本に一時帰国した。そして、コロナ禍ならではの特別な体験をした。

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話題を呼んだ気候変動に関するテレビ映画「Ökozid」

ドイツにはNHKのような公共テレビ放送が二つある。各地の9局で構成される放送網である公共第一テレビ(ARD)とラインラント・プファルツ州のマインツにある公共第二テレビ(ZDF)の二つだ。その一つのARDが11月18日の20時15分から、つまりニュースの後のゴールデンアワーに放映した映画「Ökozid」 の前評判が高かったので、私も1時間半のこの映画を覗いてみた。 続きを読む»

戦後ドイツの民主主義に貢献した政治家の死

7月26日、ドイツ社会民主党(SPD)の政治家、ハンス=ヨッヘン・フォーゲル氏が亡くなった。94歳だった。翌27日のドイツの新聞の多くは、一面に「偉大な社会民主主義者」「民主主義を体現した政治家」といった見出しの大きな追悼記事と写真を載せた。長年ドイツの政治に影響を与えてきたフォーゲル氏だが、ドイツ統一直後の1994年に連邦議会議員を辞めて、政治の表舞台から姿を消したため、若い世代には馴染みがない政治家かもしれない。しかし、旧西ドイツ時代の1972年から1989年までの27年間、ドイツの国際公共放送、ドイチェ・ヴェレの日本語番組の記者として働いた私にとっては、尊敬できる政治家の一人で、忘れられない人だった。改めて彼の長い政治活動を振り返ってみる気になった。 続きを読む»

ベルリンの壁崩壊から30年、なぜ東西間の心の壁はなくならないのか

1990年、まだ残っていた壁の前で記念写真を撮る子供

30年というのは長い年月のようで長くないのかも知れない。ドイツを東西二つの国に分断していたベルリンの壁が崩壊してから、この11月9日で30年が過ぎた。そして1990年10月3日に旧東西両ドイツが統一してからも29年が過ぎている。壁が崩壊した当時、多くの人たちは「一世代も経てば、東西両ドイツ間の差はなくなり、両国の住民は 一つになっているだろう」と考えていた。一世代とは約25年だから、旧東西ドイツの差はそろそろ無くなっても良いはずの時期にきている。しかし実際には30年が過ぎた今も、東西間の差は消えていない。それどころか、心の壁は広がりつつあるようにも見える。どうしてだろうか。

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紺碧のギリシャの海とプラティックゴミ

二年ぶりにギリシャのエーゲ海で休暇を過ごした。今回もヨットに寝泊まりし、島から島へと航海したので、多くの時間を海で過ごした。燦々と輝く太陽、紺碧の空と海、地震や火山爆発がもたらした起伏の多い荒々しい地形の島 、そこに点在する白い街並み。エーゲ海の風景は、まるで絵葉書のようだった。それでも、二年前の休暇では、時々幻滅させられたことを思い出した。

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『奪われたクリムト』に心を奪われて

世紀末ウイーンを代表する画家、グスタフ・クリムトの大規模な展覧会が、東京・上野にある東京都美術館で4月23日から始まり、話題になっているようである。全く偶然なのだが、私が、友人の浜田和子さんと訳した『奪われたクリムト、マリアが黄金のアデーレを取り戻すまで』が、この展覧会に期を合わせたかのように、梨の木舎から出版された。なぜ私たちがこの本を訳したいと思ったかをお伝えしたい。 続きを読む»