Author Archives: ツェルディック 野尻紘子

仏フェッセンハイムの原発停止、どうやら本当⁉︎

フランスのフィリップ首相はこのほど、2018年のマクロン大統領の「エネルギー転換に関する10年計画」に示されたように、フランスで最も古い原発であるフェッセンハイム原発の原子炉第一号機をこの2月22日に、第二号機を6月30日に停止すると強調した。ライン川を挟んでドイツの国境からわずか100メートルも離れていないこの原発は、1977年の操業開始以来40年以上が経っており、何度も大小の事故を起こしているため、フランスやドイツ、そしてスイスの環境保護団体、またドイツ政府からも、1日も早く停止するように求められてきた。ただ、フランスはこの廃炉で完全な脱原発に踏み切るわけではない。現在フランスの発電量の72%を占める原発の割合を、2035年までに50%に下げる計画を立てているのだ。

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2019年の「不愉快な言葉」大賞に「環境ヒステリー」

ドイツでは毎年1月に、ドイツ語学研究者らが、過去1年間に耳にすることの多かった「不愉快な言葉」を選出する。「2019年の不愉快な言葉」大賞は「環境ヒステリー(Klimahysterie)」に決まった。昨年は、グレタ・トゥーンベリさんが発端の地球温暖化対策を求める生徒たちのデモ「Fridays for Future」が大いに盛り上がり、多い時には全国で何十万人もの生徒らが授業を休んでこのデモに参加した。それをサポートする「Scientists for Future」も誕生した。そしてドイツ政府は、これらに応じるかのように脱石炭や環境対策を決めた。市民や政治家たちが、こうして熱心に環境問題に取り組むことを批判する時に、頻繁に使われたのがこの「環境ヒステリー」という言葉だった。

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ドイツ、2019年の二酸化炭素排出量1990年比でマイナス35%‼︎

©️RWE

地球の温暖化を抑えるためには、世界規模で二酸化炭素の排出量が減るべきなのだが、現実はそれとはほど遠く、排出量が世界規模で年々増え続けている。そんな中、ドイツでは二酸化炭素の排出量が2年間連続で減った。ドイツのエネルギー転換のシンクタンクであるアゴラによると、ドイツの二酸化炭素排出量は、2019年に前年比で6%も減り、京都議定書の基準になった1990年との比較ではマイナス35%になったという。これで、一度は諦められていた「2020年には1990年比でマイナス40%にしたい」という、ドイツ政府の長い間の二酸化炭素削減目標に手の届く可能性が出てきた。

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ドイツは地球温暖化防止に貢献できるだろうか?

今年もまた地球の温暖化対策を話し合う「国連気候変動枠組条約第25 回締約国会議(COP 25)」が12月2日からマドリードで開催されている。このところ世界中で温暖化の被害が目に見え始めており、2015年にCOP 21で取り決められた「パリ協定」に従って、地球の平均気温の上昇を産業革命以前の平均気温に比べて1.5 度ないし2度以内に収めることは非常に望ましい。そのためには、どの国も地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量の削減に努力すべきだ。しかし、例えばドイツのように、現在世界規模ではあまり多くの二酸化炭素を排出していない国が努力しても、大して意味がないという意見がある。二酸化炭素を大量に排出している国がまず先行すべきだというわけだ。この見解に対して、ヴッパタール気候環境エネルギー研究所がこの秋、興味深い研究を発表した。タイトルは『環境保護に関する討論』で、与党である社会民主党(SPD)系のフリードリヒ・エーベルト財団の依頼で作成された。

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ベルリンの壁崩壊から30年、なぜ東西間の心の壁はなくならないのか

1990年、まだ残っていた壁の前で記念写真を撮る子供

30年というのは長い年月のようで長くないのかも知れない。ドイツを東西二つの国に分断していたベルリンの壁が崩壊してから、この11月9日で30年が過ぎた。そして1990年10月3日に旧東西両ドイツが統一してからも29年が過ぎている。壁が崩壊した当時、多くの人たちは「一世代も経てば、東西両ドイツ間の差はなくなり、両国の住民は 一つになっているだろう」と考えていた。一世代とは約25年だから、旧東西ドイツの差はそろそろ無くなっても良いはずの時期にきている。しかし実際には30年が過ぎた今も、東西間の差は消えていない。それどころか、心の壁は広がりつつあるようにも見える。どうしてだろうか。

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知らないうちに、あなたも電力の大量消費者

皆さんは、インターネットも決して環境に良くないことをご存知だろうか。インターネットの使用が始まったばかりの頃、ペーパーレスという言葉が流行った。この言葉は、情報の処理や資料の保存などに、もはや紙は必要なく、インターネットは便利なだけでなく環境にも優しいという意味で使われた。ところがインターネットは、情報が増えれば増えるほど、驚くほど巨大な量の電力を必要とすることがわかってきた。今では、エネルギーの大量消費者に成長している。

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