Author Archives: ツェルディック 野尻紘子

曲がり角に来た再生可能エネルギー優先法

ドイツで2000年4月に施行された再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)が曲がり角に来ている。太陽光や風力などで発電した再生可能電力を設置時の固定価格で買い取り、火力や原子力で発電したエネルギーより優先的に送電網に送り込むことを定めたこの再生可能エネルギー促進のための法律が、電気料金を高くする要因の一つとなっているからだ。また、再生可能電力を促進するための賦課金が公平に負担されていないとう批判もある。年間の電力消費量が3500kWhとされる3人家族の一般ドイツ家庭の今年の電気料金は875ユーロ(8万7500円)程度になる見込みだが、このうちの賦課金は約125ユーロ(1万2500円)に達するといい、来年は更に増加するとされる。再生可能エネルギーの促進に大きく役立って来たEEGではあるが、改正や廃止を求める声が挙がっている。

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やる気満々の新連邦環境相語る

3ヶ月前に就任したばかりのドイツのアルトマイヤー新連邦環境相との記者会見に出席した。メルケル首相による前任者の更迭で思わぬチャンスが回って来たことが嬉しいのか、各方面から「ヘラクレスの大仕事」、「ドイツ統一にも匹敵する大事業」などと言われるドイツのエネルギー転換に自分が貢献出来る事を喜んでいるのか、仕事が楽しくてしょうがないというような印象を与える人物だ。この会見は外国人記者が対象で、日本の大手メディアからも数人の記者が参加していた。質疑応答形式で行われ、種々質問が出たが、内容に制限はなかった。みどりの1kWhで既に紹介して来た内容の返答も多かったが、以下にまとめる。 続きを読む»

亡命者・難民への生活保障給付金は国内の生活保護支給額と同じに

ドイツに住んでいて「この国は凄い」と思うことが時々ある。この国の憲法であるドイツ連邦基本法の第一条、第一節に書かれている「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、かつ、これを保護することは、全ての国家権力の義務である。 」という文章が、机上の空論でなく、実際に行政が取るべき行動の規範として機能しているからだ。そして国民の間には、この人間の尊厳ということに関し、コンセンサスが得られている。

政府が果たして基本法に従った政治を行っているかどうか(例えば、国内のある法律が人間の尊厳を傷つけることはないか)を判断するのはドイツ連邦憲法裁判所の役割であるが、その憲法裁判所がこのほど、政治的な理由で保護を求めて、あるいは内乱から身の危険を守るためにドイツにやって来た外国人たち(亡命者や難民)への生活保障給付金の給付額が、国内の生活保護受給者の受け取る額に対し大幅に少ないことは、人間の尊厳を傷つけるという理由で違憲の判決を下した。日本では昨今、生活保護受給者に対し不当なバッシングが起きているというニュースをしばしば耳にするが、日独両国間に存在する、人間一人一人の尊さ(尊厳)に対する捉え方の相違を感ぜずにはいられない。

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どう知らせる核廃棄物の貯蔵所 - 学者らが討議

誰も知らない、10万年も昔に地下に設置された核廃棄物貯蔵施設を、資源のありかを探る最先端のボーリング機が偶然掘り当ててしまい、放射性物質が地下水や辺り一面を汚染したとしたら!  そんなことが将来起こるのを、今の私達はどうすれば防ぐことが出来るのだろうか。10万年も放射能を放出し続ける核廃棄物の貯蔵場所を、将来の世代に伝えるにはどうしたら良いのか。その問題を考える学者たちが、このほどダブリンに集まり意見を交換した。7月18日付けのベルリンの日刊紙「ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)」が報道している。

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ノルウェーとドイツを結ぶ海底ケーブル、再生可能エネルギーの揺れをカバー

ノルウェーの石油エネルギー相とドイツの連邦経済相はこのほど、「ノルウェーとドイツ政府は長い交渉の結果、両国間に約600kmの送電用海底ケーブルを敷設することで合意した」と発表した。2018年に完成すると、ノルウェーとドイツの送電網が海を越えて繋がるようになり、両国間で電力の融通が可能になる。ドイツは将来、北海の洋上風力発電パークで生産した電力のうち、余った分を一時ノルウェーに送電して揚水発電用*に蓄えてもらい、風が吹かず電力の不足する際には電力に戻して送り返してもらうことを望んでいる。一方、水の豊富なノルウェーは、ドイツが脱原発後にノルウェーの水力で発電するきれいで安定した電力を多量に受け入れることに期待をかけている。総工費は15億から20億ユーロ(約1500億から2000億円)と見込まれ、両国で折半出資することに決まった。

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高圧送電網の新設・近代化費用は320億ユーロ

ドイツの4大送電網運営会社が先ほど提示した送電網開発計画案によると、同国が進めているエネルギー転換のために新設されなくてはならない高圧送電網は3800kmで、既存だが近代化が必要となる高圧送電網は4000km、そのために掛かる費用は200億ユーロ(2兆円)になる。北海やバルト海に計画されている洋上風力発電パークを、2022年までに接続するための送電網には、さらに120億ユーロ(1兆2000億円)が必要となり、総額は320億ユーロ(3兆2000億円)に達する。膨大な金額ではあるが、年々再生可能エネルギーの支援に支払われる金額が約140億ユーロ(1兆4000億円)であることを考えると、それほどかけ離れた額でないことが分かる。

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