ドイツが昨年隣接国に輸出・提供した電力は過去最高で、隣接国から輸入・受容した電力を230億kWh上回った。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW)の発表による。これは前年2011年の80億kWhの約3倍に相当し、今までの過去最高だった(原発8基停止以前の)2008年の223億kWh以上になる。国外に流れる電力には通常対価が支払われ輸出となるが、この中には無償で国外に流れた電力や、逆に対価を支払って外国に受け入れてもらった電力も含まれるため、一概には喜べない。このような利益に繋がらない余剰電力は、気候差で発電量が大きく揺れる太陽光や風力による再生可能電力のために、ドイツの送電網が一時的に計画外の電力で満杯になった際に発生する。
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2011年3月以来、全17基のうち8基の原発が停止しているドイツは、2012年も電力輸出国に留まった。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW)によると、1月から9月までの間に電力の輸出が輸入を下回った月は1度もなかった。同期間中にドイツから隣接国に流れた電力は146億kWhで、1年前より130億kWhも多い。例えばこの9月1ヶ月だけでも、ドイツが輸入した電力は32億kWh、輸出した電力は54億kWhで、差額は22億kWhにも及ぶ。ドイツから好んで電力を購入する国も増えているという。
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福島の原発事故3ヶ月後の2011年6月にドイツは脱原発を決定した。どうしてドイツはあれほど素早く脱原発が決定出来たのだろうか。第一の理由は、同国に反原発運動の長い歴史があり、国民が脱原発を望んでいることにあると思う。第二の理由は、電力市場が自由化されていることと、再生可能エネルギーを促進する「再生可能エネルギー優先法」が2000年以来存在することだろう。第三は、ドイツの送電網が隣接国の送電網と繋がっており、お互いに電力を融通出来ることだと考える。これらについては今までにもみどりの1kWhで何度か書いてきたが、今回、もう一つの理由を見付けた。それはドイツに充分な予備の発電能力があることだ。一般には話題になっていなかったが、政策を決定する政治家たちは充分承知していたのだろうと察する。
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2013年1月1日からの電気料金値上げが11月中旬、ドイツのほとんど全ての電力供給会社から一斉に発表された。値上げは、遅くとも6週間前までに発表し、郵便で顧客に伝えるべし、とする条例があるからだ。来年1月からの値上げの6週間前は11月20日で、期限が切れるのは真夜中だ。しかし例えば、ドイツ北部をカバーする大手の電力供給会社であるファッテンファルがAさんに値上げをメールで伝えたのは20日の夜中の23時53分、Bさんにメールが着いたのは真夜中を過ぎた2時46分だった。郵便を21日に受け取った顧客も少なくないようだ。そこでこの際、値上げは無効なのではないかと喜ぶ声があがっている。ファッテンファルの値上げ幅はとびきり大きく約13%。便乗値上げも疑われるからだ。
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「ドイツで脱原発の決定が覆るなどとは考えられない。そんなことは誰も思ってもいない」と力強く話すのはドイツ・エネルギー・エージェンシー(dena)のシュテファン・コーラー氏だ。ドイツ政府とドイツ有力銀行の共同出資で2000年に設立され、政界と経済界の接点で活躍するエネルギー問題コンサルタント会社の社長を務める。「2002年に政権に就いていた社会民主党(SPD)と緑の党が脱原発を決定した際には、各原子力発電所の残りの発電量が決まっただけで、全ての原発がいつ停止するかははっきりしなかった。発電大手もたいして本気にしていなかった。しかし今回は異なる。政党の壁を超えて、ほとんど全ての連邦議会議員が脱原発を支持しており、それに真剣に取り組んでいる」。国民の総意も脱原発だ。だから脱原発は成功しないわけがない、と言いたいのだろう。外国人記者協会の話し合いで、同氏に脱原発の行方について聞いた。
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ドイツで電気料金に上乗せされる再生可能エネルギー促進のための賦課金がこの10月、今年の1kWh当たり3.59ユーロセント(約3.6円)から来年は5.28ユーロセント(5.3円)に値上げされると発表された。それ以来、あちこちから電気料金の高騰を心配する声が上がる一方、 2000年4月に施行された再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)の存在が疑問視されだした。この法律は再生可能エネルギーの発展に大きく貢献し、世界60カ国以上でお手本となっているのだが、再生可能エネルギーの固定価格買取り制度と賦課金算出の根拠でもあるからだ。この法律はどんな経緯で誕生したのだろうか。そしてどんな道をたどって来たのだろうか。その歴史を顧みてみると、ドイツで脱原発が可能になる背景が見えてくる。
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