Author Archives: 永井 潤子

日独首脳記者会見で福島の状況には一言も触れなかった安倍首相

Abe_Merkel Empfang in dem Kanzleramt日本の安倍首相は10日間にわたるヨーロッパ歴訪の旅の最初にドイツを訪れ、メルケル首相と会談したが、会談の主要テーマはウクライナ危機と経済や安全保障問題での日独の協力関係強化だった。エネルギー転換問題でも両国首脳から何らかの話し合いの結果が聞かれることを願った私の期待はあっさり裏切られた。 続きを読む»

原発事故3年、変化するドイツ人の日本観

東日本大震災から3年を迎えた今年3月11日、ドイツのメディアは特に福島原発事故後の日本の現状について大きく取り上げた。なかでも私の心に突き刺さったのは、ケルンに本拠を置くラジオ局、ドイチュラントフンクの解説だった。 全国を聴取エリアとするドイツで唯一の同局は、報道を中心とするレベルの高い番組で知られ、ラジオはこの局しか聞かないという人もかなり多 い。日が経つにつれてこの局の3月11日の解説がさらに重みを増して私の胸に迫ってくるようになった。 続きを読む»

NHK新会長の問題発言に思う公共放送の中立性

ドイツの公共国際放送「ドイチェ・ヴェレ」のウェブサイト。http://www.dw.de

しばらく前のことになるが、NHK新会長の籾井勝人氏の公共放送に関する問題発言にショックを受けた。籾井会長は「国際放送は国内とは違う。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」などと公共放送の政治的中立性が疑われるような言葉を公然と述べたのだ。この言葉を耳にしたことは、ドイツの公共国際放送での私自身の経験を振り返るきっかけになった。 続きを読む»

第64回ベルリン国際映画祭(2) - 山田洋次監督の反戦への想い

Yoji Yamada

記者会見での山田洋次監督

今年のベルリン映画祭のコンペ部門は、華やかな「グランド・ブダペスト・ホテル」で開幕し、山田洋次監督の「小さいおうち」で幕を閉じた。山田洋次監督はベルリン映画祭のいわば常連だが、今回の映画はこれまでの山田作品とはひと味違うとベルリンでは受け取られたようだ。この映画に出演した黒木華(はる)さんが銀熊賞の最優秀女優賞を受賞したが、ドイツの新聞批評のなかには「山田監督のおかげで受賞できたのだろう」と辛口のものもあった。山田監督は黒木華に「特別の演技はしなくていい」と注文を付けたとか、彼女の演技らしくない演技、彼女の持ち味と自然な立ち居振る舞いが審査員に評価されたのかもしれない。

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第64回ベルリン国際映画祭(1) - 子どもがテーマの映画が印象に残った年

銀熊賞を受賞した黒木華さん

2月6日から16日まで開かれた第64回ベルリン国際映画祭。今年は子どもを取り巻く環境をテーマにした映画が多く、子役の活躍も目立った。ベルリン映画祭では、グランプリである金熊賞が大方の批評家やジャーナリストの事前の予想に反する意外な映画に与えられることがしばしばあるが、今年もその例に漏れなかった。コンペティション部門の話題作を押さえて金熊賞に輝いたのは、中国の若いディアオ・イーナン監督のフィルム・ノワール(サスペンス映画)「白日焔火」(Black Coal,Thin Ice)で、人々を驚かせた。

 

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第64回ベルリン映画祭 - 福島原発被害者の映画「家路」が初上映

ベルリン映画祭公式記者会見

ベルリン映画祭公式記者会見

世界3大映画祭の一つ、ベルリン映画祭が今年もきょう、2月6日から16日まで開かれる。日本からも福島原発の事故で放射能に汚染され、村全体が避難しなければならなくなった人たちの想いをテーマにした劇映画、久保田直監督の「家路」(パノラマ部門)などが参加する。

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