Author Archives: 永井 潤子

感動的なシーンで終わった今年のベルリン国際映画祭

taxi

金熊賞を受賞した「タクシー」 © Berlinale

ベルリン国際映画祭(ベルリナーレ)コンペティション部門のグランプリ、金熊賞は、予想外の作品に与えられることが多いと言われてきたが、今年は下馬評通りの作品が栄冠に輝いた。受賞作品発表の場でダーレン・アロノフスキー審査委員長が「金熊賞は、厳しい制限の下で作られた、芸術的インスピレーション溢れた作品に…」と言い始めただけで、会場内に歓声の声が沸き起こった。それが、イランのジャファル・パナヒ監督の「タクシー」を意味することは明らかだったからだ。 続きを読む»

「ドイツの良心」、フォン・ヴァイツゼッカー元大統領の死

Weizsaecker

フォン・ヴァイツゼッカー元大統領

1月31日、土曜日のベルリンは雪に覆われていた。前夜のうちに降り積もった雪で木々は樹氷のオブジェとなり、白一色の雪景色はとても美しかった。そんな「天の贈り物」を眺めて幸せな気分になっていた時、青天の霹靂のようにリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー元大統領の訃報が伝えられた。歴史的な洞察力と卓越した言葉の力で多くの人の尊敬を集めてきたドイツの偉大な政治家の死に、外国人の私も意外なほどのショックを受けた。 続きを読む»

福島原発事故のドキュメンタリー映画、ベルリン国際映画祭に参加

Dieter Kosslick PK 2015jpg第65回ベルリン国際映画祭は、2月5日から15日まで開かれるが、オープニングを飾る映画に日本人女優が出演するなど、日本関係の話題も少なくない。そこで、今年のベルリン国際映画祭での日本関係の話題をご紹介することにする。 続きを読む»

パリの風刺週刊新聞襲撃事件に対するドイツの反応−3

パリの襲撃事件から1週間経った1月13日の夕方、ドイツ統一のシンボルとなっているブランデンブルク門前のパリ広場で、静かだが感動的なシーンが展開された。ドイツ・ムスリム中央評議会とベルリン・トルコ人協会が主催した、イスラム過激派のテロと外国人排斥に抗議する警告集会に、ドイツの大統領をはじめ、首相や政府閣僚、各政党代表、ユダヤ教徒代表などを含む約1万人(警察発表)が参加し、それぞれ言論の自由を守る決意を表明するとともにドイツ社会でのイスラム教徒との平和的共生を強調したのだ。ドイツのイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒たちがこのような形で肩を並べてテロに抗議し、寛容な社会を守る意思を表明したのは、初めてのことだった。 続きを読む»

私の初夢:敗戦70周年に「平和憲法を祝う楽しいイベント」

かつて壁のあった「壁公園」沿いの「光の境界線」

2014年11月のベルリンの壁崩壊25周年の記念行事は、壁崩壊の歴史を振り返るだけではなく、世界に向けてポジティブなメッセージを伝える明るく、楽しいものだった。ベルリンの壁崩壊は、世界史上唯一の平和裡に実現した革命だと評価されている。ベルリンの喜びあふれる雰囲気は、この日をベルリンで体験しようと世界各地からやってきた人々をも幸せな気分に巻き込んだ。感動した私は、日本からも世界の人々に希望を与えるポジティブな発信ができないかと夢見た。 続きを読む»