30年以上前に脱原発を決めたオーストリア

この夏私はオーストリアで10日間、すばらしい休暇を過ごした。なによりもオーストリアの自然、アルプスの高い山々と湖のある美しい風景が、印象に残った。とくにすばらしかったのは、ザルツカンマーグート地方にある絵のように美しい湖畔のハルシュタットの風景で、古くから岩塩の発掘で潤ったというこの小さな可愛らしい街は、1997年以降ユネスコの世界遺産に登録されている。こうした美しい街や由緒ある温泉保養地に泊まりながら各地の夏の音楽祭でオペラ やオペレッタを7つも見た。私の人生ではじめての贅沢な旅で、オペラファンとしては夢のような毎日だったが、この旅行で思い出したのは、オーストリアが 30年以上も前に脱原発を決めたことだった。そのいきさつを改めて思い起こし、現在のオーストリアのエネルギー事情についてお伝えする。

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需要の5倍もの電力を生産する緑の村

「原発がないと経済や産業が成りたっていかない」とか「自然エネルギーで電力需要をまかなうというのは非現実的」と信じている人が、日本ではいまだに多いようだ。しかし、ドイツにはさまざまな科学的知見と最高水準の技術を生かして複数の再生可能エネルギーを複合的に利用し、“エネルギー自治“に成功している市町村がすでにいくつもある。具体例として模範的な緑の村、南ドイツ・バイエルン州のヴィルトポルツリート(Wildpoldsried) 村を紹介する。

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太陽光発電の世界新記録

ドイツでは5月末に北ドイツから南ドイツまで、全国的に雲一つない晴天が続き、太陽光による発電量が正午を中心に20ギガワット前後になる日が何日か続いた。これは原子炉15基から20基分の発電量に相当する。ミュンスターにある国際再生可能エネルギー経済フォーラム(IWR、 Internationales Wirtschaftsforum Regenerative Energien)によると、一国内でこれほど多量の電力が太陽光により発電されたことは過去になく、世界新記録だという。 続きを読む»

プラスチック・プラネット その1、ゴミの話

日本海に面したある入り江。毎年ここに韓国と日本の青年たちが300人、漂着したプラスチックのごみの回収にやってきます。彼らが2日間で集めたゴミの量はなんとトラック120台分もありました。この小さな入り江でこれだけ大量のゴミが漂流されてくるのをみると、海岸クリーンアップ事業がいくつあっても間に合わないのではと疑います。集めたペットボトルに韓国語や日本語で商品名が書かれてあったとはいえ、これは両国の間の問題ではなく、このゴミ問題はすでにグロバール化しています。

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ドイツサッカー連盟の社会的使命

3月2日、ドイツサッカー連盟のテオ・ツヴァンツィガー(Theo Zwanziger)会長が退任しました。ツヴァンツィガー氏は任期中、2006年の男子W杯、2011年の女子W杯ドイツ大会のホスト役を務めただけでなく、女子サッカーの促進や、同性愛者に対する偏見や差別の撤廃に精力的に取り組んだり、移民を背景に持つ人たちのドイツ社会での融和を応援してきたひとです。今回の退任に当たって「メルケル首相は、”最高の融和大臣”を失うことになる」と南ドイツ新聞は書きました。ドイツ代表戦でメルケル首相の隣に座り、ドイツのゴールが決まるとメルケル首相とハイタッチして喜ぶツヴァンツィガー氏の姿を、テレビで見たことがある方もあるかもしれません。これがどうしてみどりの1kWhと関係するかというと…

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「みどりの石炭」

市街地に山のように積もる生ゴミ。処分が大変な並木の落ち葉や藁。これらの廃棄物をシンプルな技術で炭に変え、「みどりの石炭」を生産する企業があります。昔、ドイツでは石炭は黒い金と呼ばれていましたが、落ち葉や藁が金に変わるとは正にグリム童話のような話です。 続きを読む»