Author Archives: 永井 潤子

ドイツのテレビ番組「フクシマの嘘」など

東日本大震災の1周年が近づくにつれ、ドイツのテレビはそれぞれ特集を組んで、震災1年後の日本の実情を伝えている。なかでも大きく取り上げられているのが福島第1原発の事故だが、これら原発関連番組では、日本の過酷な状況を伝えると同時に、当然のことながらドイツの脱原発の現情やヨーロッパの核エネルギー問題を考える番組が付け加えられている。例えば、ドイツとフランス両国が合同で運営する公共文化テレビ局アルテ(arte)は、3月6日(火)のゴールデンアワーから夜中までを「テーマの夕べ」として5つの番組を放映した。

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映画「イエロー・ケーキ」上映のショック

3月11日が近づき、ベルリンでも東日本大震災を追悼・記念するさまざまな行事が催されている。ベルリンのハインリッヒ・ベル・財団は原発問題を考える映画上映と討論会を2月末以降何回か行なった。私はmidori1kwh.deの他の仲間とともに2月27日に行なわれた映画の上映と討論会にまず参加した。東京の杉並・高円寺の商店街の若者たちが始めた「原発やめろ!デモ」 をテーマにしたユリア・レーゼ監督とクラリッサ・ザイデル監督の映画「ラディオアクティヴィスト」上映の後、日本から来た吉田明子さん(FoE, Friends of the Earth Japan) のフクシマの現状報告、フランスの原子力専門家、マイケル・シュナイダー氏、ドイツ・緑の党の連邦議会女性議員、ベアベル・ヘーン氏、 ドイツ連邦環境・自然保護連盟(ドイツのFoEに相当するBUND)のヘルベルト・ヴァイガー代表らのパネル・ディスカッションが行なわれた。日本の事情にも詳しいヨーロッパの専門家たちの熱のこもった議論に圧倒されたが、ドイツ在住の日本人運動家からは「楽しげな反原発デモも良いけれど、1国民が深刻な放射能の危険に脅かされている時に、もっと過激な核廃絶を求める運動をしてほしい」という意見も述べられた。

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第62回ベルリン映画祭を振りかえる 1 - 今年の金熊賞は審査員の「面白い決定」?

零下10度前後の寒さのなか、2月9日から開かれていた今年のベルリン映画祭は、いくらか寒さも和らいだ19日の日曜日、市民のための「映画デー」で11日間の華やかな幕を閉じた。世界3大映画祭の一つであるベルリン映画祭の特徴は、観客と監督や俳優など、制作関係者との間の対話が重要視されている点で、期間中市内各地の多くの会場で映画上映後観客と監督との間で熱心な質疑応答が行なわれるのが習わしとなっている。特に若い作家の実験的な作品を集めたフォーラム部門で、その傾向が強い。また、毎年痛感するのは、ベルリン映画祭当局が「タレント・キャンパス」などを通じて、世界中の若手映画制作者を育てる組織的、継続的な努力をしていることで、そうした活動を多額の助成金で支援するドイツ連邦政府の文化政策にも好感を抱く。世界中の映画関係者、愛好家が地元のベルリン市民とともに映画の醍醐味を味わうこの映画祭の雰囲気が私にはとても気に入っているのだが、ベルリン映画祭は社会性の強い作品、政治的なテーマの作品が集まることでも知られている。従って映画祭の期間中、世界中が抱える複雑な問題に集中的に目を向けることにもなるので、とても疲れる映画祭でもある。だが、毎年、この「映画の祭典」が終わった後、疲労困憊しながらも自分の世界が少し広がったような充足感を覚えるのも、また事実なのだ。

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第62回ベルリン映画祭を振りかえる 2 - 日本映画を中心に

今年のベルリン映画祭での私たちの最大の関心事は、なんといっても東日本大震災関係の3本のドキュメンタリー映画を見ることだった。フォーラム部門に招かれた3本のうち、やはり1番強く印象に残ったのは、舩橋淳監督の「ニュークリア・ネイション」だった。この映画と舩橋監督とのインタビューについては、ベルリン映画祭で上映された「Nuclear Nation」を読んでいただきたいが、私の感想もひと言付け加えておきたい。

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今年のベルリン映画祭を貫く「赤い糸」は、変革または激変

2月9日、零下10度という厳しい寒さの中、第62回ベルリン国際映画祭が始まった。19日までの11日間、コンペティション部門、パノラマ部門、フォーラム部門、ジェネレーション部門、回顧展などの各部門に今年も世界各国から約400本の作品が参加している。

毎年、映画祭全体に通じるテーマを探すのに苦労しますが、今年は難しくありませんでした。今年の映画祭の「赤い糸」は、変革または激変で、参加映画の多くが多かれ少なかれ、変革に関係しています。

ベルリン映画祭ディレクターのディーター・コスリック氏は、1月31日に行なわれた国際記者会見で、こう語っていた。

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