過大評価される電気自動車
世界各地で電気自動車(電気乗用車)が普及したら、世界の二酸化炭素排出量は軽減するだろうか。パリにある国際エネルギー機関(IEA)がこの度発表した今年度の報告書によると、電気自動車が大幅に普及しても世界の石油消費は当分減らず、電気自動車のおかげで減るだろうと予測される二酸化炭素の排出量は、2040年の時点でも僅か1%にしかならない。いくつかの新聞や雑誌が報道してしている。
IEAによると、現在世界中を走っている自動車は約10億台で、電気自動車はこのうちの200万台を占める。その割合は0.2%にしかすぎない。人口が多くて空気汚染に悩んでいる国、特に中国やインドなどが 電気自動車の導入に熱心なので、これから先、電気自動車は大きく伸びて、2040年までに走行車数が2億8000万台に増えるだろうと専門家たちは推定している。しかし彼らは、それまでにはガソリン車やディーゼル車の数も現在の倍の20億台に増えるだろうと見ている。従って、彼らの推定が正しければ、2040年の時点でも、電気自動車が全自動車数に占める割合は14%にしかならない。
IEAは、それらの電気自動車が必要とする電力は、2040年の電力総消費量の2%程度だろうと計算している。 そして2040年ごろの電力構成は、自然エネルギーが最も重要な電力源になっていて、その割合は現在の24%から40%に増えていていると予想する。これに対し、火力発電の割合は現在よりずっと減っているはずだ。
2040年に二酸化炭素の排出量が最も多いのは交通分野だろうとIEAの報告書は書いている。技術進歩の結果、ガソリン車やディーゼル車の燃費は2030年以前にピークを迎え、それ以後は増えないだろうという。しかし2040年までにはトラックや飛行機、船の交通が世界中でますます盛んになり、多量の化石燃料を消費するようになる。これらの交通機関に対する基準・規制についての話し合いは、どこでもほとんどされておらず、例えば、新しいトラックを登録する際に、消費燃料の基準を法で定めている国は現在世界に5ヶ国しかないという。
また、化学工業の世界でも石油の需要は増える見込みなので、IEAは石油の全消費量が2040年までに現在より12%も増えて、1日当たり9400万バレル(1バレル=159リットル)になると予測している。そしてその結果、二酸化炭素の排出量は、これから2040年までに毎年平均で0.4%増加するという。
IEAは「石油の時代はまだ終わっていない。地球の温暖化を防ぐためには、乗用車以外の分野での二酸化炭素削減のための努力が必要だ」と警告を発し、「このままでは今世紀の終わりまでに地球の気温は産業革命以前との比較で、2.7%上昇するだろう」と報告書を結んでいる。