私たちのエコロジカル・フットプリント
「南ドイツ新聞」の月刊別冊「ルックス360°(LUX 360°)」には「青い天使」付きの再生紙が使われています。今月、取り上げられた記事のひとつは「エコロジカル・フットプリント」で、人類が地球に与える影響を示す数値でした。私たちが住む地球の現状を知っていますか?質問に答えてみてください。
問1:現在の世界の人口は73億人と推測されています。2100年には112億人に増加するだろうと国連は発表しました。それでは、世界の人口が10億人を突破したのはいつだったでしょうか。
A 今から約300年前
B 今から約200年前
C 今から約100年前
問2:20世紀に入ってからエネルギー消費量が16倍、工業生産量が40倍に増えたそうです。更に100年前と比べて9倍に増えたのは、水の使用量です。飲料水だけではなく、水は生産過程に必要です。例えば牛肉1kgを生産するのに、1万5500リットルの水が、コーヒー1kgを生産するのに2万リットルの水が必要です。世界の一人当りの水使用料は年間平均何リットルだと思いますか。
A 年間80万リットル(毎日約2200リットル)
B 年間40万リットル(毎日約1100リットル)
C 年間20万リットル(毎日550リットル)
問3:地球の「肺」と呼ばれているアマゾン熱帯雨林では、家畜の飼料としての大豆生産のために広大な面積が失われています。又、インドネシアなどの熱帯雨林がパームオイル生産のために伐採されています。ここ30年間、世界の森林面積はどれほど破壊されたのでしょうか。
A 全体の13%
B 全体の23%
C 全体の33%
問4:このサイトでも何度か取り上げたプラスチックのゴミ。この問題は深刻です。現在、海に漂うプラスチックのゴミの量は14億トンに達したと推測されています。浮遊したプラスチックの破片が異常に集中している太平洋のゴミベルトは、宇宙空間からでさえも確認できるそうです。プラスチックが完全に分解されるまで約何年かかると思いますか。
A 50年~100年
B 150年~200年
C 350年~400年
問5:世界中で約200億頭の家畜が飼育されています。一方、漁業により捕獲される魚の量は年間およそ8千万トンで、この40%は混獲で、捨てられてしまいます。更に、消費者に届かず捨てられてしまう食品の総量は、年間13億トンに達するそうです。これは世界の食品生産量の何分の一を占めているでしょうか
A 半分
B 3分の1
C 4分の1
問への答え、難しいですね。多く間違えました。
エコロジカル・フットプリントについては、拙著『現場からの教育再生』(すずさわ書店、2011年3月)に記しました。ご存知のこととは思いますが、関連して引用させていただきます。
「教育とは、人が一回限りの生を、人間らしく、自由に活き活きと生きる事を可能にし、また、それを可能にする社会と世界を実現していくためのものである。そのためにまず、世界とわが国の現実がどのような状況になっているのかを俯瞰して確認しておきたい。
月や宇宙船から写した、漆黒の宇宙空間に浮かぶ青い地球は、まさに地球が小さな有限の惑星「宇宙船地球号」にしかすぎず、人類はその乗組員で、われわれはその1人ひとりであることを実感させる。
「エコロジカル・フットプリント」(EF)、つまり「生態系を踏みつける足跡」と言われる指標がある。これは、地球の環境容量をあらわしている指標で、人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値である。通常は、生活を維持するのに必要な1人当たりの陸地および水域の面積として示される。EFは、生物学的な生産力と比較することによって、持続可能な利用ができているか、あるいは需要過剰となっているかを明らかにする指標として使われている。現在は、すでに世界全体でも、地球1・44個分が必要な生活をしているという。
「世界中の人が日本人と同じ暮らしをしたら、地球が2・3個必要になる」と、環境NGO・世界保護基金(WWF)ジャパンが、日本人の生活が自然環境に与える影響を発表した(朝日新聞2010年8月26日)。
日本の自然環境が持つ生産能力を人口1人当たりで換算すると、各国平均の3分の1で、一方、自然環境に掛けている負荷は平均の1・5倍で、足りない分は「輸入」で補っている。負荷が最も大きいのは、アラブ首長国連邦で、地球5・7個分、2番目はアメリカの5個分だったという。
石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は採掘可能年数がそれほど多くはなく有限だから、現在でも世界全体で地球1・44個分とは、とっくに限界を越えていて、日々われわれは地球を踏み潰し、食い尽くしていっていることになる。単純計算で、1・44分の1=0・69、すなわち、今までの全世界平均の70%ほどに生活を落とさなければ、人類は持続可能な生活はできない計算である。また、日本では、2・3分の1=0・43、つまり現在の生活の程度を43%に落とさなくてはならないことになる。
世界のどの国、どの地域でも、経済成長、景気回復を叫んでいるが、この現実は、世界全体の経済成長は、もうあり得ないということを示している。経済格差が大きいから、平等であるためには、1個分以上の国は、それ以下まで生活水準を落とすことに我慢し、貧しい国の経済成長は、最大限1個分まで、となる。それを無視して経済成長を図ろうとするのは、善ではなく、悪であることを認識し、自覚しなければならない。宇宙船地球号のなかでの共生が抜き差しならない問題になっているのが現代である。