安いガソリンで高級大型車が大人気
安い石油、天然ガス、石炭が二酸化炭素削減と環境保護の戦いを難しくしている。
国際エネルギー機関(IEA)のファティー・ビロル事務局長によると、石油価格は2014年の夏以来70%も下がっている。天然ガスは同期間中に3分の2低下しており、石炭もずっと安くなっている。そのため、例えば以前には割高でも 燃費が節約できるので 、すぐ元が取れる計算だったハイブリッド車の人気が世界的に下がっている。米国では2015年の電気自動車の販売数が17%も低下したという。一方、燃料消費の大きいスポーツ用多目的車(SUV)の売り上げは13%も伸びたそうだ。
3月3日に始まったジュネーブの国際自動車ショーでも高級SUVの展示が目立つ。フォルクスワーゲンの高級車子会社ブガッティーは1500馬力のSUV「シロン」を、ベントリー、ジャガーなどの高級車メーカーに続きマセラティも高級SUVを出展している。BMWは600馬力の7シリーズ車を展示している。経営コンサルタントErnst & Young (EY)のペーター・フース氏は、「ジュネーブは省エネを話す場所ではない」と語る。デュースブルグ=エッセン大学のフェルディナンド・ドゥーデンフェッファー教授は「安いガソリンとディーゼルが、大型・強馬力車の購入に拍車をかけている」と話す。今年1月のドイツでのSUV売り上げは前年同期比で22%増にもなっている。
IEAのこれから5年間の石油市場展望によると、石油価格が上がり出すのは2017年以降で、しかも緩やかな上昇だという。理由は、石油価格の低下の原因で、現在は停止している多数の米国でのシェールオイルの採掘が、比較的簡単に再開可能だからだ。ただし、石油の消費が膨らみすぎると、長期的には供給不足がネックになり、価格が急に高騰することも考えられる。IEAの予測では、世界的な石油の需要は今後5年間も伸びる。しかし、石油採掘のための投資は昨年、前年比で24%減っており、今年も16%減る見込みだ。投資が2年間連続で減少したことは、過去30年間なかったという。