電力会社へのシグナル 核燃料税の徴収は合法
6月4日、EU司法裁判所は、ドイツが2011年に導入した核燃料税を合法とする判決を下しました。脱原発にもかかわらずにこの税金を払い続けるのは違法だと訴えていたドイツのエネルギー大手、E.ON、 RWE、 EnBWにとっては「酸っぱい敗北」になったと各紙は伝えています。
この核燃料税の導入は2010年に決まりました。ということは福島原発の事故の後に、ドイツがエネルギー転換を決める前のことです。電力会社は2011年1月以来、核燃料1グラムにつき145ユーロの税金を払っています。この税金の導入は、2010年にドイツ政府が原発の稼働期間の延長を認める代償として考えらました。メルケル政権は脱原発を決める前は、原発推進政策をとっていました。核燃料税の徴収は今のところ、2016年まで行われることになっています。
導入時の計算では、毎年23億ユーロ(約3200億円)の税収を見込んでいましたが、福島の事故を受けて一部の原発が運転を停止したため、実際には13億ユーロ(約1825億円)になっています。それでも、これまでにE.ONは20億ユーロ(約2800億円)、RWEとEnBWはそれぞれ10億ユーロ(約1400億円)の核燃料税を納めており、2014年のドイツの国家予算が、1969年以来初めて無借金だった理由の一つと考えられています。
3社は、この核燃料税が違法だとしてEU裁判所とドイツ連邦憲法裁判所の両方に訴え、50億ユーロ(約7000億円)の払い戻しを要求していました。今回の判決はEUのものですが、ドイツ連邦憲法裁判所の判決はまだで、今年中に下るものと見られています。
このEUの判決に対して、ドイツ緑の党の税政担当スポークスマンであるリザ・パウス氏と原子力・環境政策スポークスマンのシルビア・コッティング・ウール氏は、以下の声明を出しました。
この判決は、ドイツの電力会社にとって、重要なシグナルです。このような訴訟マラソンにつぎ込むくらいの多大なエネルギーを、再生可能エネルギーの拡大につぎ込んでいたら、ずっと将来性のあるビジネスモデルになっていたはずです。この敗訴を受け、電力会社は国を相手に起こしている計30件以上の訴訟について考え直すべきでしょう。核燃料税は、原子力にかかる社会的なコストの一部を電力会社に妥当に負担させるための、徹底的で効率的な手段です。原子力エネルギーは長年の間、市民の負担による巨額の補助金を享受してきました。最終処理にかかる莫大なコストも、電力会社は市民に転嫁しようとしています。
今度は、燃料税を2016年以降も続けて徴収することを議論すべきです。財務相はこの税を、最後の原発が止まるまで徴収しなければなりません。