ドイツのプルトニウムも米国へ返還? その2

まる / 2014年10月19日

ドイツの使用済み核燃料を米国に返還する計画があることは、前回お伝えしました。そんなに危なくて面倒なものを、いったい米国のどこが受け入れるつもりなのでしょうか。そしてその思惑は?

使用済み核燃料を送り出す側のドイツ、ユーリッヒ研究所のある隣町アーヘンで発行されている新聞アーヘナー・ナハリヒテン (Aachener Nachrichten) は、受け入れ先を取材した興味深い記事を、2014年8月26日に掲載しました。以下要約します。

ドイツの核のゴミが運ばれるのは、米国南部のサウスカロライナ州にあるサバンナ・リバー・サイト(Savannah River Site)。冷戦時代は、米国の核兵器に必要とされるプルトニウムを製造していた場所で、毎年4月に行われるゴルフのマスターズ・トーナメントの開催地、オーガスタ(ジョージア州)のすぐ近くに位置。800平方キロメートルの敷地に、従業員は1万2000人。核燃料料の再処理や、核兵器に使われた高濃縮ウランの処理、核廃棄物の中間貯蔵などが行われている。

米国の最終処分場探しも今のところ、ドイツと同様うまくいっていない。ネバダ州、ラスベガス近くのユッカマウンテンが候補地から外れてからというもの、1億4000リットルもの放射性廃液がサバンナ・リバー・サイトに貯蔵されている。

 それだけでも十分すぎる。「専門技術を持っているのは米国ではここだけ。もしドイツの核廃棄物に門戸を開いたら、将来的には他の国々もここにゴミを置いて行くようになるのでは?」と心配するのはサム・ボーハーさん。自然保護団体「シエラ・クラブ」のメンバーだ。

 その反対の立場を取るのは、サバンナ・リバー・サイトに30年間マネジャーとして務めたドナルド・ブリッジさん。ドイツから運ばれる使用済み核燃料が、サバンナ・リバー・サイトの稼ぎの良い職場を確保してくれるだろうと信じている。そしてブリッジさんは「ドイツ政府は、研究と発展、処理のために、これから5~6年間に約10億ドルを払うことになる」と説明する。

 市民イニシアチブ「サバンナ・リバー・サイト ウォッチ」代表のトム・クレメントさんは「サウスカロライナが、ドイツの核廃棄物最終処理場になることに興味を持っていると思うなら、ドイツは間違っている」と言う。

「使用済み核燃料を米国が引き取る」と聞くと、そのイメージは抽象的で、受け入れる側の事情や、地元の人たちの中には反対派もいるのだということまで見えてきません。だから、ドイツの地方紙でこういう現地の声を読むと、”顔が見えてくる”ようで、現実味を帯びてきます。

また、ユーリッヒから核廃棄物を米国へ輸出するのは不法として、ドイツ政府とノルトライン•ヴェストファーレン州政府がこの計画を止めない場合には、自然保護団体BUNDがドイツ連邦憲法裁判所に訴えると宣言しています。

 

 

 

 

 

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