騒がれる電力値上げは、アイスクリーム1本分
ドイツの消費者が、再生可能電力促進のために電気料金に上乗せして支払う賦課金が、2014年1月以降、今年の5.28ユーロセント(約7円)から更に上がって 6.24セント(約8.3円)になる。ドイツの4大送電網運営企業がこの10月に発表した。これを受けて各地方の配電会社は来年1月からの電気料金の値上げを発表している。値上げ幅は平均3.35%で、平均所帯で年間30ユーロ程度になるという。月割りにすれば、何とアイスクリーム1本分でしかない。
賦課金は、ライプツィヒにあるドイツの電力取引所で日ごとに変動する電力の取引価格と、再生可能エネルギー優先法(略称 :再生可能エネルギー法、EEG)で定められた再生可能電力の固定買い取り価格との差額から算出される。賦課金は再生可能電力の発電量が増えれば増えるほど 増加し、また電力の取引価格が下がれば下がるほど買い取り価格との差が開くため、上昇する。
EEGは再生可能エネルギーの促進を目的とした法律で、太陽光や風力などで発電した再生可能電力を設置時の固定価格で20年間買い取り、火力や原子力で発電したエネルギーより優先的に送電網に送り込むことを定めている。2000年に施行された当時は、そのころの高い設備投資費を克服する大きな手助けとなり、再生可能電力の普及に大きく貢献した。しかし近年は太陽光パネルの値下がりなどで、再生可能電力の一部には市場競争力も出て来ている。それでもまだ割高の固定価格が20年間支払われることに変化はなく、そこに目を付けた裕福な世帯や投資家が再生可能発電の投資に殺到し、ここ数年間に予想以上に多量の装置が設置された。
欧州にはそもそも大きな発電能力があり、以前から充分な電力が生産されていたが、そこにこの再生可能電力の増加が加わり、市場には電力があふれている。その結果、2010年には1MWh当たりまだ60ユーロ(約8000円)だったライプツィヒでの電力取引価格が現在は38ユーロ(約5000円)にまで低下している。そしてその分、賦課金がかさんで来ている。
ドイツ全国再生可能エネルギー連盟(Bundesverband Erneuerbare Energie , BEE)によると、賦課金が増えた理由は、電力の取引価格の低下以外に、国際競争力の低下が心配されるために賦課金の大部分を免除されている企業の数が増えたからだという。企業が支払わない賦課金は、一般消費者や免除を享受しない企業に振り分けられる。再生可能電力そのものの増加、つまり太陽光や風力で発電された電力の買取り価格の増加は、値上がりの15%(0.15ユーロセント)しか占めていないと同連盟は主張している。
また、同連盟のスポークスマンは、この程度の値上がりは配電会社を変更することで容易く回避できると強調する。例えば、年間の電力消費量が3500kWhとされる3人家族の一般家庭の来年の電気料金は各地の大手配電会社の場合1042ユーロ(約13万8000円)程度になる見込みだが、再生可能電力のみを配電する割安の配電会社に変更すれば45ユーロ(約6000円)程度の節約が可能になるという。
なお、EEGの改正の必要性は相当以前から唱えられているが、未だに行われていない。ドイツではこの9月に総選挙があり、新しい政府に同法の抜本的改正の期待が寄せられているが、新政府はまだ誕生しておらず、同国のエネルギー政策がどう変更するのか、まだ見えて来ない。但し、国民の圧倒的支持を得ている脱原発方針に変化のないことは明らかだ。