脱原発にも関わらず、温室効果ガス減少
脱原発反対派やドイツの大手エネルギー・コンツェルンRWEやE.on社などは、脱原発のプロセスが進んだら、温室効果ガスが増加し、気候温暖化に著しい悪影響をもたらすと主張してきた。しかし、去年、福島原発事故の3カ月後に脱原発の方針を決定し、17基のうち8基の原発の操業を停止したドイツで、温室効果ガスが減少したことが明らかになった。
これは連邦環境庁(UBA, Umweltbundesamt)が4月2日に発表したもので、同庁のフラスバルト長官(Jochen Flasbarth)は「脱原発と著しい経済成長にも関わらず、2011年のドイツの温室効果ガス、CO2の排出量は、約4億5000万トンで、排出許容量の4億5300万トンを僅かながら下回った。一昨年2010年の排出量に比べ約1%減少した。脱原発がCO2排出に悪影響を及ぼすことはないように思われる」と語った。
実はドイツが去年、段階的に原発を減らし、2022年までに完全な脱原発を実現する方針を決定したとき、ウイーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA) は、ドイツ政府が単独で急激な脱原発の方針を決定したことを激しく批判した。古い原発7基を含む8基の操業停止の後、電力の需要を満たすためには従来の石炭、石油など化石燃料を使う発電に依存せざるを得なくなり、その結果温室効果ガスが増加し、ドイツは気候温暖化防止のための国際的義務を果たせなくなるというのが、批判の主な理由だった。
そのためもあってドイツ政府やドイツ産業界は、去年の温室効果ガス排出量の統計発表を緊張して待っていたのだが、喜ばしい結果が発表されたのだった。不況に悩む他のEU諸国と違い、好況を維持しているドイツで温室効果ガスが減ったのは、産業界全体の気候温暖化防止のさまざまな努力、省エネやエネルギー効率を高める努力などが成果をあげたことと再生可能エネルギーの増加のためだという。特にエネルギー部門での温室効果ガス排出量は、2%から6%減少した。
こうした事実に原発反対派は、気候温暖化防止を理由にドイツの脱原発をストップし、ドイツに“原発ルネッサンス“を起そうとしていた原発推進派の根拠は失われたと勢いづいている。「原子力ロビーの神話は、またしても崩れ去った。古い原子力発電所は、効果的な気候温暖化防止のためにすら役立たないことが実証された。スーパー・ガウ(炉心溶融や放射線物質の飛散をともなう大規模事故)の危険があり、最終廃棄物処理の解決策も見つからない原発は即時廃炉にすべきである」こう語るのは反原発運動家のヤン・ベッカー(Jan Becker) さん。ベルリンのドイツ経済研究所の女性経済学者、クラウディア・ケムフェルト(Claudia Kemfert) さんも「我々はいま再生可能なエネルギーに向けての実質的な方向転換を体験しているのだ」と語っている。
ミュンヘンで発行されている「南ドイツ新聞」は、2012年4月3日の紙面の一面トップに「脱原発にも関わらず、温室効果ガス減少」という見出しの記事を載せ、「気候-変動(Klima-Wandel)」というタイトルの解説でも取り上げた。このタイトルのKlimaという言葉には、気候だけではなく、雰囲気という意味も含まれている。解説者は「ドイツ最大の原子力企業、E.onのタイセン社長(Johannes Taysen) は、原発から撤退したら、気候温暖化防止のための目標を2025年までに実現するのは難しいと反対してきた。しかし、原発賛成派は原発の必要性を主張するもっとも重要な根拠を失ったことが、きのう以来明確になった。多くの指導的な経済学者が長い間不可能だと見なしてきたことが可能であることを、ドイツは実証したのだ」と論じている。
これは心強いニュースですね。
「原発はCO2を出さない」というのが、原発推進派のキャッチフレーズですが、
福島の事故後、「発電時にCO2を出さないだけで、稼働全体としてはCO2をかなり出す」
ということを知りました。
電力会社が出してくる情報だけ見ていると、いろいろ見誤るなあ、と反省しました。