放射性廃棄物の危険を未来の人へどう伝える?

やま / 2012年3月11日

夜8時のテレビニュースの後、「犯行現場(Tatort)」が始まります。40年以上、毎週日曜日に放映されるこの人気番組が終わると、討論番組が続きます。放映時間とタイミングが良いのか、堅い番組にしては視聴率が高く、時事問題が取り上げられます。原発震災1年を目前に控えた今回のテーマは原子エネルギーでした。

「原発は罪・しかし原発なしで本当にだいじょうぶ?」という議論に参加したのは「エネルギーの安全供給に関する倫理委員会」委員長であるクラウス・テップファー元環境相。
「原子力・化石燃料の時代からソーラー世紀へ」「請求書を送らない太陽」などの数多くの環境問題をテーマにした著書で知られている環境ジャーナリストのフランツ・アルト氏。
ドイツの学校では義務となっている青少年小説、邦題「みえない雲」の作者であるグードルン・パウゼヴァング女史。
この3人に対抗したのが、元ノルトライン・ヴェストファーレン州知事で現在RWE電力会社の幹部、原子力ロビイストであるヴォルフガング・クレーメンス氏と、放射能はごく自然な現象で怖がることはないと語る、元宇宙飛行士で物理学者のウルリッヒ・ヴァルター氏の2人でした。
この討論会で恐ろしいと思ったことは、人の記憶の短かさでした。原発震災のわずか一年後に、「原子力技術は低炭素エネルギー・オプションとして放棄できない」とか、現に再生可能エネルギー生産価格が着々と下がっている事実を無視して、「このままではエネルギーコストが上がり、ドイツ産業は経済競争に負けてしまう」などと堂々と述べる人たちの声が聞こえることでした。
「私たちは一番肝心な問題点について話し合わなかった。それは放射性廃棄物だ」というグードルン・パウゼウァング女史の言葉で今回の討論は終わりました。

放射性廃棄物を無害にすることは不可能です。仮に永久地層処分場ができたとしても、未来の人に放射能の危険性を警告することができるでしょうか。未来とは、どれぐらい先のことでしょうか。1980年代にレーガン大統領は、記号学の研究者であるトーマス・A・セベオク教授に1万年後の人類にも放射能の危険性を理解できる警告標識や方法の研究を依頼したそうです。放射性廃棄物を頭に置くと短期間ですが、以下に記された人類の歴史を見ると、その当時1万年と考えるのが精一杯だったのでしょう。

約2000年前    キリストが誕生する
約4800年前    ストーンヘンジができる
約6000年前    ピラミッドができる
約1万年前     新石器時代がはじまる

しかし人間の想像を絶するのが放射性廃棄物の半減期です。

プルトニウム239    24,000年
プルトニウム242    375,000年
ヨード129             16,000,000年

これに比べると言葉の“半減期“は一瞬です。世界で一番歴史があると言われている漢字はおよそ3500年前にできました。5000年前に世界最古の文字で書かれたメソポタミア神話は、ごく少数の専門家しか理解できません。8000年で言語は完璧に変わってしまうそうです。だれにでも理解できるはずだと、1946年に作られた国際的な放射能警告標識ですが、今の子供たちにはプロペラにしか見えないそうです!

これからの世代に忘れないように伝えていく方法とは?
戦後に思春期を過ごしたグードルン・パウゼウァング女史がナチス犯罪について繰り返し尋ねたとき、大人たちからは無言の答えか、「知らなかった」という答えしか返ってこなかったと語ります。その時から、子供や孫に「なぜ、黙って何もしなかったの?」と聞かれないように生きたいと決心したそうです。