2019年のドイツの電力生産、再生可能エネルギーがトップ!
新年早々、嬉しいニュースが飛び込んできた。2019年を通してみた時、風力や太陽光などの再生可能エネルギーによる発電量が、褐炭、石炭、天然ガスなどの化石燃料による発電量を初めて超えたというのだ。年末には原発も一基停止し、ドイツで稼働中の原発はあと6基となった。これらの事実は、ドイツでエネルギー転換が着実に進んでいることを示している。
この調査を行なったのは、ドイツ南西部のフライブルク市にあるヨーロッパで最大の太陽エネルギー研究機関、フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所 (ISE、 Fraunhofer-Institut für Solare Energiesysteme ) だ。おめでたいニュースにふさわしく、調査報告書の日付は2020年1月1日、つまり元旦となっている。ただしこの調査結果は、気をつけて受け止めなければならない。発電量を把握するために使うドイツ連邦統計局のデータは、昨年9月までのものしか出ておらず、10月から12月までの数字は過去の例をもとに算出されたものだからだ。また、ここでいう発電量には、発電所が発電に使用するために使う電力や企業が行う自家発電による電力も含まれていない。これらを加えると、結果が変わることは十分ありうる。
そういう条件付きではあるが、今回の調査で、再生可能エネルギーによる発電量が全体の46%を占め、化石燃料の40.2%をしのぐという快挙を成し遂げたことがわかった。発電源ごとの発電量の割合は以下のようになっている (総発電量は515.56テラワット時)。
様々な発電源の中で一番発電量が減ったのは褐炭で、前年に比べて29.3テラワット時減少した。それに続くのが石炭で、発電量は23.7テラワット時減った。それぞれ減少率で表すと、褐炭はマイナス22.3%、石炭はマイナス32.8%となっている。フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所はその理由として、欧州連合のCO2排出権取引制度(EU-ETS、European Union Emissions Trading System)でのCO2の価格が上がった一方で、 風力による電力供給が増え、電力相場での電力の価格が下がったことを挙げている。それにより、多くの二酸化炭素を排出する褐炭や石炭による発電の利ざやが減り、発電事業者にとってこれらの資源による発電は魅力的でなくなったのだ。実際に1トンのCO2の価格は、昨年15.79ユーロ (約1895円) から24.80ユーロ (約2976円) に上昇したし、卸売市場での電力の年間平均価格は15%下がり、1メガワット時36.64ユーロ (約4397円) になっている。
褐炭や石炭とは逆に、発電量が前年比15.7%アップと大きな伸びを見せたのは、風力発電だ。この数年トップの座を争ってきた風力と褐炭だが、昨年1年間のうちの8ヶ月間、風力の方が褐炭より多くの電力を発電した。また風力は、天候に左右されないことが売り物の原発より、年間を通じて常に多くの電力も発電しており、ドイツの主要発電源の地位を獲得したと言えそうだ。再生可能エネルギーの中で風力に次ぐ発電源である太陽光は、前年比の1.8%しか伸びていない。それでも、3月から9月までの間、石炭より常に発電量が多かったという。これは雨の少なかった猛暑の影響で、手放しでは喜べないことだが、発電における脱炭素化が進んでいることは好ましいことだ。
ドイツは2030年までに、全ての発電量の65%を再生可能エネルギーで賄うことを目標にしている。その割合は2005年には11.3%、2010年には19.1%、2015年には33.3%、そして昨年2019年の46%と順調に伸びてきている。しかし、一昨年ほどから、騒音や振動による人体や自然への被害や、森林伐採による環境破壊などを理由に、風力発電施設の設置反対を行う市民運動が全国各地に広がってきている。楽観視は許されない。