洋上風力発電、促進に固定価格は要らない  

こちゃん / 2017年5月7日

ドイツでは、昨年夏に再生可能エネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)が改正され、この1月から施行された。それによって風力や太陽光、バイオマスで発電される再生可能電力の促進には、今までのような国が固定の買い取り価格を保証する制度が廃止され、競争入札制度が導入された。競争入札の際には、最も低い買い取り価格を提示する企画・企業が落札する。その結果、洋上風力発電の価格が大幅に下落し世間をあっと言わせている。

この度ドイツで行われた初の洋上風力発電装置の建設に関わる競争入札では、再生可能電力の促進のために国が保証する買い取り価格を「要らない」とする三つのプロジェクトが落札した。 やはり落札が決まった残り一つのプロジェクトは1kWh当たり6ユーロセント(約7.2円)の買い取り価格を提示したので、今回の入札で要求された買い取り価格の平均は、1kWh当たり0.44ユーロセント(約0.53円)となった。連邦ネットワーク庁が今回の入札の条件として考えていた保証する買い取り価格の上限は、1kwh当たり12ユーロセント(約14.4円)だったので、洋上風力発電の価格は、誰もが予想していなかったほど大幅に下落したことになる。

プロジェクトの計画と施行に長期間を要する 洋上風力発電装置の場合は、2021年以後に稼働を開始する装置に関して入札制度が導入されるが、2020年末までに稼働を開始する装置には今まで通り固定の買い取り価格が支払われる。また、今回公募されたのは、プロジェクトが既に進行しており、建設許可なども出ており、 2021〜2025年の間に稼働を開始するだろうと見込まれる装置で、公募の容量も、固定の買い取り価格から競争入札へと制度が移行する際の例外として1550MWあった。これは2021年以後に予定されている公募容量の年間700〜900MWよりずっと大きい。

国の保証する買い取り価格を「必要としない」として落札に成功したのはドイツ4大電力会社の一つであるENBWが北海に計画しているウインドパーク「He Dreiht」。容量は900MWで、2025年に完成するという。他の三つはデンマークの風力発電大手Dong Energyが同じく北海で計画しているウインドパークで、容量は合計で600MW弱になる。二つのプロジェクトは保証買い取り価格を「必要としない」としているが、一つには1kWh当たり6ユーロセントを要求した。今回の入札で落札を見逃したのは、ドイツ4大電力大手の一つである RWE の再生可能電力専門子会社の Innogy や、やはりドイツ4大電力会社の一つに数えられるスウェーデンのVattenfallのプロジェクトで、このことは両企業にとり痛手だと伝えられる。また、残るドイツ4大電力の一つである E.ON は入札に参加しなかったとも言われている。

ENBWやDong Energyが、保証付きの買い取り価格を要求しないことは驚きに値する。なぜなら、現在バルト海と北海で稼働しているドイツのウインドパークには、最初の8年間1kWh当たり19.4ユーロセント(約23.28円)、そしてその後の12年間には3.9ユーロセント(約4.68円)の固定価格が支払われているのだ。陸上風力電力に支払われている固定買い取り価格も20年間1kWh当たり約9ユーロセント(約10.8円)と今回の0ユーロセントや6ユーロセントより遥かに多い。

上述の企業が買い取り価格の保証を要求しなかった背景にはまず、風力発電装置の規模がより大きくなり、また風車の効率がより向上したことがあげられる。例えば、ドイツの電機大手、シーメンスの生産する風車の羽根は長さが150 mで、発電容量も1基で8MWもある。さらに海中の土台の建設費や風車の組み立て費、操業に際してのメンテナンス費も以前に比べ安価になっているという。従って発電にかかる経費が確実に下がっているのだ。

落札に成功した企業が買い取り価格の保証を不要とする他の理由には、「He Dreiht」などが稼働を開始する時点には、ドイツの原子力発電所が全て停止していることがある。 二酸化炭素の排出量が多い褐炭や石炭火力発電所のいくつか、あるいは多数が停止している可能性もあると見られる。そうすると、電力の需要と供給のバランスが取れて、現在は電力が市場に溢れているために低迷を続けている卸売価格が上昇しているだろうと見込まれる。また、電気自動車が普及していて、電力の需要が伸びているだろうという観測もある 。

しかし、エネルギー関連の研究会社であるAurora Energy Researchのコンサルタントは「保証付き買い取り価格ゼロということは、安くなる発電経費と電力の卸売価格の上昇に対する賭けだ」と言う。再生可能エネルギーの研究機関であるAgoraのグライヘン所長は、「電力の卸売価格が予想に反して上昇しない場合には、今回落札はしたが、それでもウインドパークを建設しないと言い出すところが出てくるかもしれない」とも語る。保証付き買い取り価格 ゼロということは、2021年以後に予定されている政府の洋上風力発電の公募容量が小さいことへの業界の抗議を反映しているのだという声もある。「洋上風力発電には十分競争力があるのだから伸びを抑えず、2021以後にもっと建設を許可せよ」というサインだというのだ。

ドイツでの洋上風力発電装置の建設に関しては、今のところ2018年にもう一度例外的に1500MWの競争入札が予定されている。連邦ネットワーク庁のホーマン所長は「来年の競争入札で同じような結果が出るかは疑問だ」と発言している。「今回入札に参加した企業のプロジェクトは既に非常に前進していたので、是非とも今年落札したいという強い希望があったに違いないからだ」と説明する。

なお、現在ドイツでは16の洋上ウインドパークで、 合計950基の風車が稼働しており、容量の合計は4100MWに達する。

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One Response to 洋上風力発電、促進に固定価格は要らない  

  1. 折原(埼玉県) says:

    「ENBWやDong Energyが、保証付きの買い取り価格を要求しない」。本当に驚きですね。このままずっと進んでいくと、革命的ですね。

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