ドイツ連邦政府の脱原発は合法

まる / 2016年12月11日

12月6日、ドイツ連邦憲法裁判所は、脱原発を早めたことで損害を被ったとして大手3電力会社が連邦政府に対して求めていた賠償請求を、一部認める判決を下した。一方で同裁判所は、2011年のドイツ政府の決定を合法と認めた。

福島原発事故後の2011年6月に連邦政府は、すべてのドイツ国内の原発を遅くとも2022年までに停止させることを決定した。この決定は、前年の10月に決定された原発の稼働延長(最長2036年まで稼働)を覆すものであった。大手電力会社のうち、E.on、RWE、ヴァッテンファルの3社は、この2011年6月の脱原発の決定が電力会社の憲法に定められた基本権である財産権を侵すものであり、脱原発の時期が早められたことで電力会社が被った損失の賠償を求めて連邦憲法裁判所に国を訴えていた。非常に長い、膨大な判決であるが、簡約すれば脱原発の決定は合法であり基本法を侵していないが、“相応な“賠償金は認めるという判決であった。”相応な”賠償とは、一般には電力会社の要求していた190億ユーロ(約2兆3000億円)ではなく、20億ユーロ(約2435億円)程度だろうと評価されている。

7日の南ドイツ新聞の解説は「脱原発ー権利と平和」という見出しで、ミヒャエル・バウフミュラー記者がコメントしている。

連邦憲法裁判所は、ドイツの平和にとって大きなことをやり遂げた。脱原発を早めたことは、生命と健康、また自然な生活環境を守るのに貢献する。生命を守ること以上の合法性を、法律が見いだすことはまずない。

この判決は、長年の間、あらゆる障害にも関わらず、自分の人生を脱原発のために捧げてきたすべての人たちの功績を認めるものである。ヴィール原発建設計画に立ち向かったバーデン地方のワイン農家の人たち、ヴァッカースドルフ、グンドレミンゲン、ゴアレーベン、ブロックドルフの市民運動の人たち。建設現場の柵に並んだデモ参加者たち、人間の鎖を作った人たち。彼ら皆が、自分たちの生活基盤を守るために闘った。彼らがいなかったら、脱原発も、この判決もなかったであろう。

しかし彼らが立ち向かっていた相手は化け物ではなく、企業であった。企業は利益を追求するものであるが、法律が許す枠組みの中で行動しなければならない。これらの法律は長い間、原発を推進してきた。そしてこれらの法律は、電力会社によって影響されてきた。チェルノブイリと福島の事故の後に、より批判的になった世論の影響で、より厳しい法律、そして脱原発にまで至ったように。ということで、RWEとヴァッテンファルが少なくとも、取りのがした利益に対する代償を得ることができるのは結果として正しい。脱原発の法律が彼らを、競争相手と比べて不利にするのであるから。しかし、何十年にもわたって国が原発に投入してきた額に比べれば、それが国に対して過大な要求をすることにはならないだろう。

連邦憲法裁判所の裁判官たちは、これにより、この国が長い間待たなければならなかった平和を作り出す。どの電力会社も、原子炉をこれ以上少しでも長く操業し続けることを望むことはできない。原発がほとんど採算に合わないことは全く別として。今後いかなる連邦政府も、この技術に回帰することはない。あと6年。そうすれば最後の原発が停まる。

連邦議会議員でみどりの党の原子力政策スポークスマンであるジルビア・コッティング=ウール氏は6日に自分のホームページで
「基本的に、今日の判決は非常にポジティブである。憲法裁判所は脱原発を根本的なところで認め、原発運営者たちの傲慢さを跳ね返した。高リスクのある技術の評価は、明かに国の管轄下にあり、日本での原発事故に反応してドイツでの脱原発を早めたのは合法だった。国民の恐怖だけでも十分な理由になる」と歓迎した。

グリーンピースは「原発運営者はほんの一部の賠償金しかもらえない」「憲法裁判所は電力会社の訴えの大部分を却下した。国には、原発の稼働期間を限定する権利がある」「2022年までとは言わずに、即時原発から撤退するよう求める」という声明を出している。

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