スタートアップ企業が新型バッテリー開発

ツェルディック 野尻紘子 / 2016年9月11日

ノルウェーのスタートアップ企業が新型のバッテリーを開発した。コンクリートのブロックの中に鉄のパイプを通すという簡単なもので、多量の熱を長時間蓄積することができ、その際の熱損失が少ないという。ドイツの新聞数社が報道している。

5年前に設立されたこの会社の名前は「エナジー・ネスト」、従業員数は12人。使用するコンクリートは、同社の設立メンバーの一人である資材研究専門のP. G. ベルゲンさんが、ドイツのセメント大手のハイデルベルグ・セメント社と共同で開発した特別に配合されたセメントだという。コンクリートのブロックは四角で、大きさは40フィート・コンテナと同じだ。その中に鉄のパイプが格子状に組み立てられている。そしてそのパイプには最高摂氏450度の高圧水蒸気、あるいは特別オイルが送り込まれる。

一つのコンクリートブロックが蓄積できるエネルギーは約2MWh。玩具のレゴのように 、いくらでも積み重ねたり増やしたりすることが可能なので、工場や自治体などの必要に応じで容量を簡単に設定することができる。例えば ハンブルグのような大都市に風の吹かない一晩、十分な 電力を 供給するためには、計算上大型コンテナ船一艘に搭載可能なコンテナ数に相当するぐらいの数のブロックが必要になる。工場の生産工程で発生する熱を溜めるには、10個、100個、1000個のブロックが必要になる。

社長のクリスチャン・ティールさんはハンブルグ出身のドイツ人で、「再生可能エネルギーを経済的に利用するために、これまで欠けていた重要な要素を開発し、実用可能なものにした」と胸を張る。多少誇張のように聞こえるが、ノルウェーの権威ある技術検査協会 DNV GL の検査で、この簡単で経済的なバッテリーには大きな可能性のあることが証明されている。同協会は、「ブロックは環境に優しい資材で出来ており、大量のエネルギーを蓄積するのに適している。必要とされる場所の近郊で簡単に生産ができるし、保守も簡単だ。寿命は50年ぐらいあるだろう」としている。技術的には熱でも電力でも蓄積できるという。

通常、バッテリーは高価だとされるが、このブロックの価格は一個約5万ユーロ(約565万円)で、通常のバッテリーの3分の1ぐらいでしかない。すでに数ヶ月前からは、アブダビのマスダー・シティー(Masdar City)の太陽光発電所で試験運転が始まっており、これからは商業ベースの活動に乗り出す。社長のティールさんの故郷ハンブルグからの注文もあるそうだ。これまでにこのスタートアップに約900万ユーロ(約10億1700万円)の資金を提供したのは英国、米国、ノルウェーの投資家で、この他、ノルウェーから200万ユーロ(約2億2600万円)の公的資金が提供されたという。

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