電気料金の動き – 仮に上がっても家計に影響なし

こちゃん / 2015年11月1日

再生可能電力の促進のためにドイツの消費者が電力料金に上乗せして支払う賦課金が、今年の1kwh当たり6.17ユーロセント(約8.21円)から来年は僅かに増えて6.354ユーロセント(約8.45円)になる。ドイツの4大送電網運営会社がこのほど発表した。メディアではニュースとして取り上げられているが、このところドイツ人の給料は増えているし、ドイツの物価は上昇していないので、消費者はあまり気に留めていない。しかも電力の卸売価格は急テンポで下落している。

3人家族で年間電力消費量が3500kwhのドイツの平均世帯の場合、賦課金の上昇で上がる電気料金は付加価値税を含めても来年からは年間で7.77ユーロ(約1041円)にしかならない。一方、ベルリンにあるドイツ経済学研究所(DIW)によると、ドイツ人が現在、石油価格の下落で節約できている金額は人口一人当たり年間100ユーロ(約1万3300円)だという。ドイツで冬の暖房や給湯に石油を使う世帯は全世帯の約3分の1を占めている。また、このほどのドイツ統計局の発表でも分かるように、全世帯の4分の3は車を所有しており、全通勤者の3分の2が車を利用して会社などに通っている。従って、灯油やガソリンが安くなると、消費者の懐は直接潤う。3人家族の場合、安い石油価格は300ユーロ(約3万9900円)の節約になるから、賦課金の上昇とは比較にならないほど大きい。また、物価上昇率はこのところほぼ0%だが、給料の方は前年比で2〜3%上がっているから、年間で7.77ユーロの賦課金の値上がりは痛くも痒くも無い。

賦課金が上がる第一の理由は、再生可能電力の大幅の増加で、電力が市場に余っており、電力取引市場での卸売価格が低下を続けていることだ。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW)によると、今年の卸売価格の低下は前年比で7%にも達する。この事実に対し、環境保護団体、グリーンピースのニクラス・シーネルル氏は、「風力や太陽光発電の増加で電力が余ってしまうということは、二酸化炭素の排出量が多く環境に悪い褐炭火力発電をいつまでも許すからだ。停止すれば賦課金は下がる」と批判する。一方、与党であるキリスト教民主同盟のミヒャエル・フックス議員は、「( 同党が過半数を持たない)連邦参議院で、(野党である)緑の党が再生可能電力の固定価格買取りの対象となる発電量を抑えることに反対したことが理由だ」と反発している。緑の党からは、「環境に悪い発電には環境負担金を課すべきだ」という意見も出ている。この他、一般消費者とは異なり、賦課金の支払いをほぼ全面的に免除されている企業が2200社もあることを問題だとする声も絶えない。電力消費量が大きいこれらの企業は、国外の企業に対し国際競争力が劣らないために 賦課金のほとんどを免除されているのだが、その免除額は合計で50億ユーロ(約6650億円)にも達するという。これは、本年度の賦課金総額約240億ユーロ(約3兆1920億円)の20%強で、一般消費者はその分も負担していることになる。

ドイツの電気料金にはこの他、送電網構築に対する賦課金や環境に優しいコージェネレーション(熱電併給)促進のための賦課金、更には付加価値税も課せられており、それらの合計は消費者の支払う電気料金の50%強に相当する。しかし、エネルギー関連のシンクタンク、アゴラ・エネルギーヴェンデの専門家たちは、現在1kWh当たり3.567ユーロセント(約4.74円)の卸売り価格は、2016年には更に下がって3.25(約4.32円)ユーロセント、つまり9%も低下するだろうと予測しており、その低下分を電力販売会社が消費者に還元すれば、電気料金は今年以上にならないはずだと見ている。消費者団体なども、電力販売会社を変更して安い電気料金の会社と契約することを勧めている。ただ、電力販売会社の中には電力企業と長期の購入契約を結んでいるところも多く、卸売価格が下がってもそれをすぐ消費者に還元できない会社もあるようだ。

なお、ドイツでは再生可能エネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)に従って太陽光や風力で発電された電力が、送電網運営会社に優先的に買い取られ送電網に送り込まれる。また、生産費の高い自然電力には従来の電力に比べ、より高い固定価格が支払われる。その固定価格と電力取引所で扱われる電力の卸売価格との差額が賦課金として消費者の電力料金に上乗せされる。

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