ドイツの二酸化炭素排出量削減、高い目標値を再確認

ツェルディック 野尻紘子 / 2014年12月28日

ドイツ政府が、二酸化炭素の排出量を2020年までに1990年比で40%削減することを再確認した。2007年に決めたこの目標値の達成は危ぶまれていたが、このほど種々の方策を閣議決定、環境保護リーダー国としての位置を守る意向だ。個別では火力発電が最大の削減量を担う。

 ドイツの今までの二酸化炭素の削減量は1990年比で32〜35%で、このままでは2020年までにまだ8%〜5%足りないとされていた。 目的達成に関しこれまで、二酸化炭素排出量の最も多い火力発電の分野での削減が適当だとする連邦環境省と、脱原発と脱火力発電は同時に出来ないとする連邦経済・エネルギー省が中心になって 争っていた。そしてその対立する意見を、環境保護団体や経済界がそれぞれ支持していた。

ドイツ連邦ネット・エージェンシーのホーマン会長は「目標が間違っているから再考が必要だ」と語っていたし、 ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟代表のミュラー氏は「マイナス40%は脱原発決定前の考えで、それではドイツ経済の競争力がなくなる」と主張していた。 またドイツ産業連盟は「電気料金が2020年には15.5%も高くなる」と警鐘をならしていた。他方、野党の緑の党などは「気候目標を放棄するのか」と非常に批判的だった。環境保護団体からは「ドイツの環境保護リーダーとしてのイメージを守るべきだ」とする声が多く聞かれた。

そしてこのほど、ドイツ政府は「 エネルギー効率アックションプラン」と「 気候アクションプラン」の閣議決定に漕ぎ着けた。それによると、ドイツの二酸化炭素削減量は、既に今までに 計画されていた量から更に年間6200万〜7800万トン増える。その結果、ドイツの二酸化炭素の排出量は、現在の年間9億5000万トンから2020年には7億5000万トンに減る見込みだ。

二酸化炭素削減の比重が最も多くなるのは産業と発電分野だ。大小企業は新しい効率規定に従い、500の「効率ネットワーク」を形成して協力し合い、二酸化炭素を約 3000万トン削減する。火力発電の分野では、今までに既に決まっていた2020年までの年間削減量を更に2200万トン削減する。これは、二酸化炭素の発生を2020年まで毎年更に440万トンずつ多く減らさなければならないことを意味する。ただ、決められたのは削減量だけで、国は、どの火力発電所を何時までに停止せよということは指定せず、企業に任せるという。

その他には建物の熱遮断や古い暖房装置の更新、交通分野での電気自動車の普及を含む省エネ化、農業分野での農薬使用量の削減など数々の方策が示された。この分野では最高約3000万トンの削減が期待される。農薬は使用後に地球温暖化ガスの一つである一酸化二窒素が発生し好ましくないし、生産にも多量のエネルギーが必要になる。

火力発電に関しては、現在市場に電力が溢れていること、そのために電力の卸売価格が低下していること、採算の合わない火力発電所の停止申請がネット・エージェンシーに提出されているなどがあり、電力の安定した供給に影響は出ないと見られる。

One Response to ドイツの二酸化炭素排出量削減、高い目標値を再確認

  1. 素晴らしい閣議決定ですね。
    シュヴァルツヴァルトを緑深い森によみがえらせたドイツに大いに学び、
    日本政府の姿勢を転換させたいと思います。
    記事を転載させてください。