下がるかもしれない来年の電気料金

ツェルディック 野尻紘子 / 2014年10月19日

ドイツの4大送電網運営会社が、再生可能電力を促進するために消費者が電力料金に上乗せして支払う賦課金を、2015年には1kWh当たり6.17ユーロセント(約8.39円)に設定した。今年の6.24ユーロセントより0.07ユーロセント(約0.1円)低い。低下額は微少だが、賦課金が下がるのは初めてのことだ。ここ数年来下がって来ている電力取引市場での電力価格とも相俟って、来年はドイツ家庭の電気料金が下がるかもしれない。

賦課金低下の理由は、消費者が今年既に支払った賦課金がまだ全額電力生産者に支払わられておらず、残金が9月末までに14億ユーロ(約1904億円)に達したからだ。昨年同時期には賦課金が22億ユーロ(約2992億円)も不足していたので、送電網運営会社は 昨年10月に、今年のために少し高めの賦課金を設定していた。しかしそれが実際には少し高過ぎたのだ。このため送電網運営会社は、来年の賦課金は1kWh当たり6.17ユーロセントでも生産者への支払いが賄えると判断した。

ただ、3人家族で年間電力消費量が3500 kWhのドイツの平均世帯の場合、この賦課金の軽減だけでは年間電気料金は3ユーロ(約408円)も安くならない。

他方、ドイツでは再生可能電力の大幅の増加で、電力が市場に余っており、電力取引市場での電力卸売価格は低下を続けている。このため2013年のスポット価格の平均は1kWh当たり3.78ユーロセント(約5.14円)まで下がった。

ドイツ再生可能エネルギー・エージェンシー(AEE、Agentur für Erneuerbare Energien)によると、この安い卸売り価格の影響で、2012年に1kWh当たり5.9ユーロセントだった電力販売会社の電力調達費は2013年には5.7ユーロセント、2014年には4.9ユーロセントに下がっており、2015年には4.0ユーロセントまで下がる見込みだという。従って、電力を一般家庭などに販売するこれらの電力販売会社が、賦課金と卸売価格の低下を消費者に還元すれば、電気料金は1kWh当たり1ユーロセント程度まで下がる可能性がある。3人家族の場合、電気料金が年間で約30ユーロ(約4080円)下がる計算だ。

消費者がインターネットで電力の販売価格を比較出来るウェブサイト、ヴェリヴォックスによると、3人家族の年間電気料金が2012年の時点に998ユーロという電力販売会社があったのに対し、従来からの大手電力販売会社は平均で1061ユーロも要求していたそうだ。「安くなった電力調達費は消費者に還元すべきだ」と語るのは緑の党のバーバラ・ヘーン連邦議会議員だけではない。同氏は「大手販売会社の料金値下げを待つより、安価な販売会社を見付けて新しい契約を結ぶ方が手っ取り早い」とも話す。ジグマー・ガブリエル連邦経済・エネルギー相もテレビのインタビューで、競争の原理を活用して販売会社を変更するように消費者に呼びかけた。

なお、ドイツでは再生可能エネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)に従って太陽光や風力で発電された電力が、送電網運営会社に優先的に買い取られ送電網に送り込まれる。また、生産費の高い自然電力には従来の電力に比べより高い固定価格が支払われる。その固定価格と電力取引所で扱われる電力の取引価格との差額が賦課金として消費者の電力料金に上乗せされるのだが、1kWh当たりの賦課金は同法が施行された2000年の0.2ユーロセント(約0.27円)から今年は6.24ユーロセント(約8.48円)にまで上昇していた。その理由は、自然電力が大きく増加していることと、その増加のためにドイツでの総発電量が増え、電力取引所での取引価格が低下していることにある。

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