原発輸出に待った! ドイツ政府、保証を打ち切りに 

まる / 2014年6月22日

「自分の国では脱原発を決めながら、海外に輸出し続けるとは何事か」という批判があったドイツ。ドイツ政府はこれまで、民間企業が原発を輸出する際に貿易保険で保証をしてきましたが、これにようやくストップがかかるようです。

6月12日に、ジグマー・ガブリエル経済相が「ドイツは原発に別れを告げた。過酷な、制御不能のリスクがあるからだ。これらのリスクは外国でも同様にある。だから、いわゆる“ヘルメス保証”はもう行わない」と明らかにしたものです。

この“ヘルメス保証”とは何かというと……ユーラーヘルメス(Euler Hermes)信用保険会社が行う貿易保険のことです。ユーラーヘルメスは民間の保険会社で、ドイツ政府が業務委託しています。他にも委託先はあるのですが、ほとんどがこの会社に委託されているため、一般に“ヘルメス保証”と呼ばれています。

貿易保険とは、輸出や技術供与などを行う際に、何かしらの政治的、経済的理由が発生して輸出が不可能になったり、輸出代金の回収が不可能になったりした場合に、その損失を補填するものです。もし実際に輸出不可能、代金回収不可能という事態になった場合には、政府が肩代わりすることになります。ということは、公的資金、つまり税金がつぎ込まれるわけです。

例えば、現在W杯が開催されて注目を浴びるブラジルには、アングラ3という原発があります。この原発は1970年代に計画され、一時建設が停まっていましたが、フランスのアレバ社と共同でドイツのシーメンス社が完成させる予定になっていました。これに対し、ドイツ政府は13億ユーロ(約1800億円)の保証をするつもりでいました。そこへ2011年3月11日の福島原発事故が起こったのですが、ドイツ政府はこの計画を変えなかったため、環境市民団体などから厳しく批判され、見直しを行ってきました。

ドイツでは実は、公的資金を使って原発輸出を推進することは、2001〜2010年の間は禁じられており、行っていなかったそうです。1998〜2005年の社会民主党と緑の党の連立政権がその決定をしました。この禁止が解かれた途端に、キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟と自由民主党の連立政権(2009〜2013年)は、原発輸出を推進しようとしていたことが分かります。

日本のメーカーも、現在トルコやUAE(アラブ首長国連邦)などに原発を売ろうとしていますが、地震の危険があったり政情が不安だったりするこれらの国々で、もしトラブルがあって代金回収不能になったら、その代償を支払うのは日本の納税者だという意識は希薄なような気がします。原子力損害賠償法(原賠法)によってメーカーの賠償責任が免責されているのはおかしいとして、原発メーカーを訴える「原発メーカー訴訟の会」についてはこのサイトでも既にお伝えしましたが、日本の場合、貿易保険はどうなっているのでしょうか。原発のことは、調べれば調べるほど、ますます分からないことばかりです……

2 Responses to 原発輸出に待った! ドイツ政府、保証を打ち切りに 

  1. tajima says:

    アラブ首長国連邦に韓国の大統領が自ら乗り込んで「是非私達に受注して下さい。成功したら65年間、万が一原発に事故が起こって予定通りの収入がなかったら、その補償は韓国政府が致します。」というプレゼンをして東芝日立三菱に受注を勝ち取った経緯がある。この何が何でも受注したいために65年間も補償すると言った内容で安倍首相も売り歩いていると想像できます。私達国民のお金を当てにして、なんだと思っているのか。

  2. みなさん、お変わりございませんか。

    日本も政府系の銀行と保険会社が発展途上国への原発輸出を支えています。

    JACSES(http://www.jacses.org/ )の田辺さんのお願いしました。かれはヴェトナムやトルコへの原発輸出の問題を
    それを支える金融システムの観点から批判してきた第一人者です。田辺さんから以下のメールをいただきました。
    参考にしてください。 崔 勝久

    <JBICやNEXIの原発輸出について詳しく書いたものはなく、添付のように部分的に触れた原稿のみです。
    また、以下の資料でも若干触れています。
    http://www.jacses.org/sdap/nuke/presentation20140415.pdf
    ご参考になれば幸いです。
    JACSES 田辺 >