ドイツ人ジャーナリストのルポルタージュ『福島360°』

あきこ / 2014年6月8日

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環境ジャーナリストであるアレクサンダー・ノイロイター氏の『フクシマ360°(Fukushima 360°)』という本が最近ドイツで出版された。「2011年3月11日に核分裂した被害者たちの人生」という副題がついている。核戦争防止国際医師会議ドイツ支部の協力を得て出版された本を開くと、「今もまだ生みだされ続けるチェルノブイリと福島の犠牲者」という肥田舜太郎氏の言葉が目に飛び込んでくる。

 

著者のノイロイター氏は法律を学び、ダイムラーベンツ、保険会社のアクサ、マイクロソフトといった多国籍企業のマネジャーとしてヨーロッパ、アメリカ、インドで勤務した後、2008年からフリーのジャーナリストになったという一風変わった経歴を持っている。1965年にオランダで生まれたが、育ったのは暫定的な核廃棄物中間貯蔵施設があるドイツのゴアレーベンの近くで、現在もこの地域に住んでいる。環境をテーマに写真と記事でルポを書き続けているジャーナリストである。

『フクシマ360°』の表紙を開くと、「福島の子どもたちと勇気ある女性たちに」という献辞が書かれている。この本は、福島原発事故の被害者へのインタビューだけではなく、事故が起きた背景、事故の当事者である東電、収束に関わった支援者、脱原発を目指す活動家、医師たちとも話し合い、実に幅広い角度、まさに360°から現状をとらえようとしている。

インタビューには山本太郎、上杉隆といったドイツにいてもネットなどで目にする人たちが登場する。また、子どもたちの健康に不安を抱える母親、有機農業の夢を福島で実現しようとした人、先祖代々の農家を受け継いできた人などに加えて、子どもたちへの影響を心配する沈黙しない勇気ある医師たちのインタビューも記録されている。これらのインタビューを通じて、3年前の原発事故によって福島の人々の生活、希望、夢がどのように変化したのかを理解しようと試みている。

フォトジャーナリストの本だけあって多くの写真が胸を打つが、随所に被害者への共感、当事者である東電への怒り、エネルギーを膨大に消費する大都会への批判が読み取れる。著者と本書の紹介について、抜粋の翻訳の許可も含めて問い合わせたところ快諾を得たので、逐次このサイトで紹介を続けたい。この記事の冒頭の動画は、「百聞は一見にしかずだから、このサイトも見てほしい」という言葉に添えて、ノイロイター氏本人から送られてきた。なお同書はドイツ環境財団 (Deutsche Umweltstiftung) によって「2014年6月の環境図書」に選ばれた。

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