ドイツは外国の原子力電気を必要としない      

まる / 2013年3月3日

フライブルクに本拠を置くエコ研究所(Öko-Institut)は1月31日、「ドイツ脱原発の、近隣諸国との電力交換にもたらす影響」という研究の結果を発表しました。簡単にまとめると、2011年3月にドイツで原発8基が停止された後、外国からの電力輸入量は増えておらず、「ドイツの脱原発は隣国から原子力発電による電力を輸入しているから可能である」という主張も間違っているというものです。

この研究はグリーンピースの依頼で行われたもので、報告書は101ページもあり、調査対象となったのは2003年以降のドイツの電力輸出入です。日本では「ドイツが脱原発できるのは、フランスから原発の電気を買っているから」と思っている人も多いと聞くので、この研究報告の中からドイツとフランスの輸出入関係についての結論だけを書き出してみます。

  • ドイツ国内で電力需要が最も大きいのは冬である。それにもかかわらず、ドイツは冬に電力を輸出し、夏には輸入している。ということは、ドイツには国内の需要を満たすだけの発電能力が十分にある。
  • 電力をフランスから輸入しているのは、冬よりも需要が少ない夏の間である。その理由の一つは、春と夏にアルプス地方で雪解けになり、水力による発電量が増え、同時にコストの高い化石燃料を使う発電所は運転停止となること。もう一つの理由は、夏の間フランスでは電力需要が減るが、原子力発電所の発電量を減らさないよう運転し続けるため、余剰電力はドイツなど隣国諸国に輸出されること。
  • 2011年の春と夏、確かにフランスからの輸入量は少し増えたが、それはこの季節における典型的な動きであり、原発8基を停めたからではない。フランスからの輸入量はドイツの発電量の1%ほどだった。この間にフランスにおける原発による発電量は増えておらず、ドイツの原発停止の影響は受けていない。
  • 2011年、フランスから物理的に輸入された電力量は実際にライプチヒの欧州電力取引場(正式名: The European Energy Exchange, EEX)で取引きされた量より多かった。物理的輸入というのは、欧州の送電網が繋がっているために電力が勝手に流れてくるというということである。このうちの多くが、ドイツを経由してスイス、さらにはスイスを経由してイタリアまで流れている。
  • 2012年、フランスからの電力輸入量は、福島原発事故前よりも少なかった。

 

この研究はもちろんドイツとフランス以外の隣国諸国、例えばチェコや北欧諸国などとの輸出入関係についても触れていますが、結論は「ドイツは自らのエネルギー需要をカバーしながら、同時に外国へ電力を輸出する能力を持っている」ということです。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW)の発表によれば、2012年のドイツの電力輸出量は史上最大でした。そして伝統的に夏に輸入が輸出を上まっていたのが、2012年には逆転しました。特に輸出量が多かったのは夏の午後の早い時間帯だったことは、太陽光発電がさらに普及したことを示しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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