ドイツ、減りつつある二酸化炭素排出量

ツェルディック 野尻紘子 / 2018年4月15日

ドイツの 二酸化炭素排出量は2017年、前年より470万トン減って、合計で 9億470万トンになった(前年比0.5%減)。排出量減少に大きく貢献したのは発電部門。これに対し交通部門と工業部門では好景気を反映して排出量が増えた。ドイツ連邦環境庁の速報による。

発電部門での二酸化炭素排出量は、前年より1370万トン(前年比4.1%減)も減って3億1850万トンになった。発電価格が下がり競争力の増した風力発電が大きく伸び、石炭火力発電に取って代わったことが主な理由で、多数の石炭火力発電所と、石炭より質が悪いのでより多量の二酸化炭素を排出する褐炭火力発電所が発電を停止したことが貢献している。

これに対し、交通部門での二酸化炭素排出量は昨年380万トン増えて1億7060万トンになった。その理由の一つは、技術の発展に伴い車1台当りの二酸化炭素排出量はずっと減っているのだが、全体では乗用車数が前年比で1.5%、トラックが同4.1% と大きく増加していることだ。また、車1台当りの走行距離も増えている。より多く燃料を必要とする四輪駆動車やオフロード車などが増えていることも二酸化炭素の増加に繋がった。ドイツではさらに現在、ディーゼル車から排出される酸化窒素が問題だとされ、走行禁止も話題になっているので、二酸化炭素排出量の少ないディーゼル車からガソリン車への切り替えが進んでおり、そのために増えた二酸化炭素の排出量は昨年1年間で20万トンに達したと言われる。

ドイツ政府は、ドイツ経済が昨年、前年比で2.2% 成長したと見ている。 経済活動が活発で、それに伴い工業部門では二酸化炭素の排出量が2.5% 増えて1億9300万トンになった。

ドイツ連邦環境庁によると、ドイツの二酸化炭素排出量は1990年に比べて現在までに 27.7% 減っている。 ドイツ政府が2007年に独自に定めた「2020年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で40% 削減する」という野心的な目標の達成は非現実的だと認めたが 、このほど成立した新政府のスヴェニア・シュルツェ連邦環境相は「40%削減を出来る限り早期に達成したい」と述べている。同氏はまた、「2030年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で55% 削減する」という2015年末の「パリ協定」で約束した目標の達成も可能だと見ている。ただし、そのためには「電力部門でのエネルギー転換だけではなく、交通部門でのエネルギー転換も必須だ」とし、そのための新しい環境保護法の設定を考えていると語っている。連邦環境庁のマリア・クラウツベルガー長官も「根本的に車の台数が減ること、そして省エネタイプの車の割合が増えるべきだ」と発言している。

なお、ドイツの年間二酸化炭素排出量が全世界の年間二酸化炭素排出量とされる350億トン強に占める割合は3% 以下だが、ドイツ人一人当りの年間排出量は11トンで、これは世界の平均よりずっと多い。「世界の住民一人一人が排出しても構わない」とされる二酸化炭素の排出量は、現在のところ年間2トンと言われている。

 

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