緑の党「2030年までに脱石炭火力発電」
連邦政府の脱原発決定がぶれることのないドイツで、テーマ切れのために低迷を続けているように見受けられていた緑の党が、今年9月の総選挙に向けて脱原発に続く課題を見つけ出した。新しいテーマは「2030年までの脱石炭火力発電」。同党誕生の発端は反原発運動だったのだが、脱石炭は果たして同党をどこまで引っ張っていけるだろうか。また、脱石炭はすぐにやってくるだろうか。
緑の党は、今年3度あったドイツの州議会選挙で3回とも得票率を減らしている。まず3月26日のザールランド州議会選挙では5年前の5.0%から4.0%に落ち込み、5%条項に阻まれ、州議会から締め出されてしまった。5月7日のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙の結果では与党に止まったものの、得票率は13.2%から12.9%に減っている。そして5月14日の、ドイツの州の中で最も人口の多いノルドライン・ヴェストファーレン州議会選挙では得票率を11.3%から一挙に6.4%と大幅に減らして、与党の座を追われた。
世論調査会社ポリット・バロメーターの5月の調査で、「次の日曜日に総選挙があったら、どの党に投票しますか」という設問に対し、「緑の党」と答えた人は6.5%。2013年の総選挙(現連邦議会)では8.4%の得票率を獲得していたのだからほぼ2%減っている。別の世論調査会社インフラテスト・ディマップの6月の同様の設問の結果は7%だった。また、同じくインフラテスト・ディマップの行った他の調査で、「他政党も環境や気候保護をテーマにしているので、緑の党はもはやあまり重要ではない」という意見に「ほぼ同意する」と答えた人は調査対象者の57%にも及んでいる。
このような状況の中で、6月16日〜18日にかけて行われた今秋の総選挙準備のための緑の党代表者大会では、 最も古くて効率が悪く、多量の二酸化炭素を排出する国内の20の石炭火力発電所をすぐに止め、2030年までには脱石炭火力発電を完全に成し遂げることが公約として決まった。「脱石炭は気候保護を意味する。我々は再び歴史を作るかもしれない」とエツデミール党首。「我々の目標は過激だが、現実性があり、我々は責任を自覚している」と同氏は主張する。古い石炭火力発電所の即座の停止は、「2020年末までに1990年比で二酸化炭素排出量マイナス40%」というドイツ政府の掲げている二酸化炭素削減目標の達成を可能にする。
党大会ではこの他、 現在電力料金に掛かっている電力税を廃止し、その代わりに自動車などから排出されている二酸化炭素に値段を付けることが提案されている。二酸化炭素税は、再生可能電力促進のために消費者が支払う賦課金を減らすために使うという。また2030年までに全電力の需要を再生可能電力で賄うこと、2050年までには熱、交通分野のエネルギー需要を全て再生可能エネルギーでカバーすることが掲げられている。
ドイツで唯一人、緑の党出身のバーデン・ヴュルテンベルク州のクレッチマー州首相は、「いつの間にか、どの政党もみんな何だかエコになったから、緑の党はもう要らないというのは大きな間違いだ。気候変動に対する闘いは緑の遊び場などではない。21世紀の人類に関わる中心的な問題なのだ」と力強く語った。
なお、党大会では「 開かれた、連帯性のある欧州」「公平・正義の強化」「自由を尊重する社会」「教育機関への更なる投資」「上限のない難民の受け入れ」「(同性同士を含む)誰とでもできる結婚」などが政権に参加する際の党の目標として公約された。このうち、「誰とでもできる結婚」はメルケル首相のテレビ番組での発言がきっかけとなって、今会期最終日の6月30日に連邦議会で急遽可決された。
脱原発、というテーマが切れると、それがすぐ緑の党の支持者減になる、というのは、どうしてなのでしょうか。その他の活動がみえないからなのでしょうか。
とはいえ、「国内の20の石炭火力発電所をすぐに止め、2030年までには脱石炭火力発電を完全に成し遂げる」ことを公約にしたとのこと。理想を追い求める姿勢が素晴らしいと思いました。