ドイツの省エネ住宅

やま / 2011年11月27日

これはドイツ連邦交通・建設・都市開発省のポスターです。真っ白い冬景色の中に古い家が建っています。「大事なお金を空焚きしないで下さい。あなたの家に、しっかり防寒着を用意しましょう」と住民に呼びかけています。建物の外断熱工事をして燃料消費量を減らせば、温室効果ガス排出量も削減でき、更に暖房費も安くて済みます。

 

何故、建物の省エネは必要なのか

10月31日に70億人目の子供が世界のどこかで生まれました。2050年には世界人口は更に100億人に達すると予想されています。地球温暖化の最大の原因となるCO2を生み出すのは人間です。人の消費する、世界の全エネルギーの半分は建物の中で使われているそうです。1)化石燃料からエネルギーを取り出した後に放出される二酸化炭素などの物質が地球の温暖化を加速させています。事実ここ100年間に地球の平均気温が摂氏0.7度上昇ているそうです。地球温暖化とその影響による、洪水や干ばつ、猛暑やハリケーンなどの激しい気候変動は既に増加しています。
産業革命前と比べ、地球平均気温の上昇を2度以下に抑えるためには、大気中に溜まる温室効果ガスの上昇を10~20年間以内にストップしなければなりません。更に化石燃料は有限燃料で、専門家や地質学者たちは石油ピーク2)はもう既にきていると宣言しています。そして福島第一原発事故後の今、原発からは脱却するしかありません。ですから、これからの政策は、自然エネルギーの使用を増やすことと、省エネ、節電の2段構えです。
ドイツでは国内の全エネルギー消費量の35パーセントを建築分野が占めています。デナ(dena)3)の調査によると、住宅エネルギー消費量の83パーセントは暖房と給湯に使われます。そのためのエネルギー源の割合は現在、下記のとおりです。4)

天然ガス

48.70

%
灯油

29.80

%
地域熱供給5)

12.60

%
電力

6.00

%
石炭

2.90

%

 

ドイツ全国では約1800万棟の建物が住宅として使われ、そのうちほとんどが1977年の断熱法実施6)前に建てられた物です。既存建築物は新築の3倍以上の暖房費がかかるといわれています。ですからこの既存建築物を改修すれば、低コストでCO2排出量を減らすことができます。

いつから、省エネ対策は始まったか

1973年のオイルショックは、ドイツにも大きな影響を与えました。例えば4回にわたり日曜日の運転禁止令が出されました。「車を奥さんより大事にする」と言われているドイツ人にとっては歴史に残るショックでした。また、夏時間が取り入られたのもこの影響です。
1973年のオイルショック以前に建てられた新しい住宅はエネルギー消費量を考えずに設計されました。モダンな構造とデザイン、家中どこでも摂氏23度の暖かさ。この結果エネルギー消費量は急増しました。燃料が安価だったので、暖房をつけたまま、換気するのは当たり前でした。一軒家で地下室のタンクに4000~5000リットルの石油を買っておく家庭は普通でした。(石油1リットルを燃焼すると2.47㎏のCO2が排出されますから、一家庭につき、排出量は年間10~13トンになります。)
石油依存脱却を図る対策として、建築物における断熱法と暖房機器に関する法7)がその当時に定められました。2002年にはこの2つが省エネ法8)として融合され、現在までに3度も改正されて、基準が厳しくなっています。例えば外壁を例に取ると、1980年代は厚さ30センチの空洞レンガで済んだのですが、その後8センチの外側断熱が必要になり、今では厚さ14~20センチの断熱層を設置するよう、勧められています。2009年に再生エネルギー助成法9)が実施された結果、暖房に一部、再生エネルギーが義務づけられるようになりました。
→  その2に続く

 

1)Sol Power, eine READ-Publikation (Renewable Energies in Architecture and Design)
エネルギー消費は交通と産業にそれぞれ25パーセント、建物に50パーセントとなる。

2)(英: peak oil)石油の産出量が最大となる時期・時点のこと。

3)Deutsche Energie Agentur, ドイツ・エネルギー・エージェンシー、www.dena.de

4)連邦エネルギー・水利経済連盟、2010 の統計

5)例えば電力会社が、発電の際生じる余剰熱を、地中のパイプを通して地域の家庭などに供給する。

6)Wärmeschutzverordnung、1977年11月施行

7)Heizungsanlagen-Verordnung、1978年10月施行

8)EnEV, Energieeinsparverordnung

9)Erneuerbare Energien Gesetz

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