増え続けるコーヒー容器に挑む - ベルリンの環境保護団体

あきこ / 2015年9月13日

 

Becherheld_DUH

“カップのヒーローになろう” © DUH

ベルリンにある環境保護のための非政府組織(NGO)「ドイツ環境支援 (DUH、Deutsche Umwelthilfe)」が、コーヒーショップで用いられる使い捨て容器に反対するキャンペーンを始めたというニュースを読み、早速、「ドイツ環境支援」の担当者を訪問した。

 

「ドイツ環境支援(以下DUH)」は1975年、ドイツ南部ボーデン湖畔にあるラードルフツェルで生まれた環境保護団体である。ドイツには5つの大きな環境NGOがあるが、DUHはその一つで、環境保護だけではなく消費者保護も活動の柱としている。ベルリン事務所は2001年に設置され、首都の事務所として政治的活動、広報活動以外に、エネルギーと気候保護、循環型経済、自然保護、交通を重点として活動している。

DUHは2年前、プラスチック袋をなくす運動を大々的に行ったが、今回はそれに続くキャンペーンで、9月18日と19日、ベルリンの中心部にあるアレクサンダー広場で「コーヒーショップの使い捨て容器反対集会」を開く。DUHのユルゲン・レッシュ事務局長は、「ドイツ全体で一年間に28億トンのコーヒー容器が使われている。これだけの量の容器を生産するために、6万4000トンの木材、15億リットルの水、1万1000トンのプラスチック(ポリスチレン製カップや蓋、紙繊維カップのコーティング用ポリエチレン)、さらに1億3200万キロワット時の電力が必要だ。もはやこの問題を無視することは許されない」と言う。

スターバックスやその他のコーヒーショップは、「環境にやさしい素材あるいはリサイクルペーパーを用いた紙コップを使用しているから、環境に負担をかけていない」と主張しているが、DUHはこれらの主張は正しくないと考えている。DUHによると、リサイクルペーパーの場合、とくに新聞や雑誌に用いられるインクが体内に入ると悪影響を及ぼす可能性があるという。また、環境にやさしい自然素材として使われているサトウキビは、その栽培に除草剤や防虫剤が使われること、サトウキビ栽培のプランテーションのために熱帯雨林を破壊する伐採が行われることなどから環境への負荷が大きいとしている。

DUHは今回のキャンペーンのために、「カップのヒーロー」と名付けたリユース可能な保温式容器を1500個作らせた。保温式なので、短時間に飲みほさなくてもよい。DUHはすでにスターバックスとの話し合いを終え、この容器を持って行けばコーヒーが30セント(約40円)割引になることで合意したという。DUHの試算では、リユースの容器を使えば、ドイツ人一人当たり年間で34の使い捨てコーヒー容器が節約できる。しかしDUHが目指しているのは、個人消費者がリユース容器を持参するという個人レベルでの削減ではない。コーヒーショップ全体がリユース容器を使用するというシステムの確立、使い捨て容器には20セントの税金を課すという政策の実現を目指している。コーヒーを飲んだ客が飲み終えた容器を別のコーヒーショップに持って行っても容器代を返金してもらえるように、コーヒーショップの業界が結集して容器の回収システムを作るというのが、DUHの考える理想のシステムである。

DUHから多くの資料が送られてきたが、中でも「使い捨て紙コップと環境問題 - 知っておくべき重要な事実」という資料から、知っておくべき事実をいくつか挙げておく。

 

使い捨て容器と環境問題 - 知っておくべき重要な事実

  •  ドイツ全体で一年間に使われる28億トンの使い捨て容器は1時間にすれば32万個
  •  生産に必要な6万4000トンの木材のためには4万3000本の原木が必要
  •  生産に必要な15億リットルの水は年間3万2000人分の水使用量に相当
  •  1万1000トンのプラスチック生産のためには約2万2000トンの原油が必要
  •  1億3200万キロワット時の電力は、模範的に電気を使う家庭10万世帯の年間使用量に相当

 

DUHは、「カップのヒーロー」を手にした男性が使い捨て容器のゴミの上をスーパーマンのように飛んでいるポスターも作っている。そこには「リユース容器でコーヒーを飲み、環境を守るカップのヒーローになろう」と書かれている。DUHの循環型経済部門のトーマス・フィッシャー部長は、「ニューヨークではリユース容器を持ってコーヒーショップに行くのは当たり前になっている。ニューヨークでできることが、ベルリンでできないはずはない」とキャンペーンが効果を上げることに自信を持っている。

 

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