ドイツ主要5政党の選挙公約にみる電気料金の高騰対策
ドイツでは本日9月22日(日)、連邦議会選挙が行われる。エネルギー転換に伴う電気料金の高騰が議論の一争点となっているが、主要5政党はどのような対応策を示しているのだろうか。各政党の選挙公約を読み比較することで、電気料金高騰への対応方法を調べてみた。
ドイツの主要5政党は、現首相のアンゲラ・メルケル氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、社会民主党(SPD)、自由民主党(FDP)、緑の党(Die Grünen)、そして左翼党(Die Linke)である。各政党はオンライン上に選挙公約の全文を公表しており、誰もが手軽に公約を読むことができる。多くの選挙公約文が100ページ前後であるが、緑の党のそれは特に長く全部で336ページに及んでいる。各政党の電気料金高騰対策を比較するため、選挙公約のドイツ語原文を「電気料金(Strompreis)」および「エネルギー料金(Energiepreis)」でキーワード検索し、関連する部分を読んだので以下に要約する。
CDUとFDPは共に電気料金の高騰に対して「市場経済的な」解決法を使うとしているが、選挙公約を見る限り具体策の提示はあまりされていない。特にCDUの電気料金に関わる公約は他の4政党と比較すると短めで抽象的に書かれており、スマートグリッドの拡大による電気料金の引き下げを提案するに留まっている。それに対して、SPDと緑の党は共に、エネルギー料金高騰対策として「省エネとエネルギー効率の改善」を公約に明記している。
再生可能エネルギー優先法改正に関しては、SPD、緑の党とFDPが改正に前向きな姿勢を示している。SPDは再生可能エネルギー優先法の根本的な改正がコスト削減、そして電気料金の値下げにつながるものとし、緑の党は、法改正により大企業への優遇措置(再生可能エネルギー促進のための賦課金の減免措置)を見直すことで、結果的に一般家庭の電気料金が下がると主張。これによって、4人家族が1年あたり35ユーロの電気料金軽減を期待できるとの計算結果を発表している。この大企業への優遇措置には左翼党も反対の姿勢を示している。一方で、FDPは、再生可能エネルギー優先法改正自体には前向きだが、大企業への賦課金の減免措置は雇用や経済成長を維持するために必要不可欠だと主張し見直すつもりはない。FDPの法改正案としては、再生可能エネルギーの市場への導入を促進したり、中小企業の援助を拡大したりと経済的な競争力を高めることに重点を置いているようだ。
他には、SPDが電力税引き下げを明記し、これによって電気料金の値下げを目指すのに加え、エネルギー省の設立を示唆。なお、FDPも電気料金対策に即効性を持つとして、電力税の引き下げを主張し、さらに「電気料金制御(ブレーキ)」の導入も支援する。そして左翼党は、国家当局の中に消費者、環境・社会団体、労働組合の代表から成る諮問委員会を設置し、電気料金決定のプロセスを監視するとしている。それが実現するまでは現在の電気料金の据え置きも公約している。
最後に、キーワード検索のヒット数に関してだが、「電気料金」および「エネルギー料金」というキーワードで選挙公約の文中を検索した結果、緑の党の公約がヒット数15件でトップ、続いてSPDが9件、FDPが5件、左翼党が4件となり、CDUはヒット数最小の2件に留まった。キーワードのヒット数が全てとは言えないものの、緑の党とSPDが電気料金の高騰対策に力を入れているということが、このリサーチから確認できた。