仏原子力安全機関、南仏の原発に稼働停止命令

じゅん / 2017年10月22日

フランス南部、アヴィニョンの北約40キロのところにあるトリカスタン原子力発電所は、これまでもさまざまな事故を起こしてきたことで知られる。9月末、フランスの原子力規制官庁である原子力安全機関(ASN)が、トリカスタン原発の4基の原子炉すべてに稼動停止を命じたことが、最近になって明らかになった。稼動停止命令は、福島原発事故のような大事故が起こる可能性があるという理由からだった。

トリカスタン原発の4基の原子炉は、いずれも加圧水型原子炉で、合計360万kWの発電能力を持ち、フランス全国の電力生産量の約6%を生産しているという。1号機と2号機は1980年に、3号機と4号機は1981年に運転を開始した古いもので、しかも、最近それぞれ10年の稼働期間延長が認められている。トリカスタン原発は、ローヌ川に近いドンゼール・モンドラゴン運河の西岸に隣接して作られており、冷却水はこの運河から取り込まれている。ASNは、地震や暴風雨などの影響で運河の水が原子炉施設に大量に流れ込み、その結果冷却装置が機能しなくなり、福島第一原発事故のような大事故が起こる危険がある。その対策が十分ではないとして、4基全部の一時的な稼働停止を命じたのだ。

グリンピース・フランスの活動家たちは、何年も前から「トリカスタン原発とフェッセンハイム原発でフクシマのような大変な事故が起こる危険がある」と警鐘を鳴らし、抗議行動を続けてきた。しかし、これまで、原発を運営するフランス電力(EDF)は事故の起こる可能性を過小評価し、安全性を監督する立場にあるASNも厳しい態度をとらないと批判されてきた。グリンピース・フランスの原子力問題担当、ヤニック・ルーセレ氏は「トリカスタン原発の原子炉の一部は、隣接する運河の水面より10メートルも下にあり、ダムが決壊して大洪水になった場合、十分な冷却水が得られない状況が生まれる。その結果、フクシマのような大事故が起こる可能性があると我々は警告してきた。そのこと自体は新しいことではないが、ASNがこうしたグリーンピースの見方を一部であれ、認めたのは新しいことだ」と語っている。

原子炉安全問題専門家のマンフレッド・メルティンス氏も、驚きを隠さない。

ASNはトリカスタン原発の原子炉すべての稼働停止を命じ、その理由を説明した。そのなかで、これまでフランスの原子力関係者が公式に認めようとしなかったこと、つまり、ヨーロッパの中心部で、福島原発事故のように複数のメルトダウンを伴う過酷事故が起こる可能性があることをはじめて認めた。フランスの原子力規制官庁が原発事故の危険性をこれほどはっきり指摘したのは、これまでになかったことだ。ASNがトリカスタン原発に稼働停止を命じたことよりも、その理由の説明の方が自分にとってはセンセーショナルだった。

「フランスの原発では、福島原発事故のずっと前にメルトダウンを伴う大事故がもう少しで起こるところだった」と指摘するのは、ドイツの公共放送、「ドイツ第一テレビ(ARD)」のエネルギー問題専門家、ユルゲン・デシュナー記者である。

1999年12月27日、フランス南西部、ワインの名産地ボルドーの北約50キロにあるブレイエ原子力発電所内に、隣接するジロンド川の水が堤防を超えて大量に流れ込んだ。大西洋の満潮とハリケーンが重なったため、河口部の急激な増水で洪水に見舞われたのだ。原子炉敷地内に9万立方メートルもの水が入り、4基の原子炉のうちの2基で冷却装置のための電源が喪失した。深刻な事態ではあったが、かろうじて大事故は免れた。

原発は大量の冷却水を必要とするため、基本的に海や川、湖のそばに建設される。地震と津波、暴風雨による洪水や堤防決壊などによる大量の水が、想定外の危険をもたらすことが、福島原発事故以来、誰の目にも明らかになった。福島原発事故の後、フランスでもすべての原発の「ストレステスト」が行われた。当時、ASNはもっとも危険な原発としてこのトリカスタン原発とドイツとの国境に近いフュッセンハイム原発を挙げていた。2011年12月のASNの報告書でも、トリカスタン原発はダム決壊や洪水対策が十分ではないと指摘され、遅くとも2014年末までに適切な護岸工事を行うよう命じられていた。しかし、その後十分な対策は取られなかったようだ。数週間前EDF自体が、地震が起こった場合、堤防の安全対策が十分ではなく、大きな事故に繋がる危険があると報告したため、ASNは急遽、一時的な稼働停止という思い切った命令を出したのだ。

デシュナー記者は、稼働停止にいたる経過をこのように書いた後、「トリカスタン原発の4基の原子炉の再稼働の時期についてEDFは今年11月はじめと発表している。しかし、多くの専門家は早期再開の可能性は低いと見ている」と指摘した。

反原発の運動家たちは、今回ASNがEDFの報告に素早く反応してトリカスタン原発の稼働停止を決めたことを歓迎する。その一方でASNのこれまでの対応に対する批判も生まれている。パリで活躍するドイツ人の核問題専門家、マイクル・シュナイダー氏も「ASNはもっとずっと早い段階で、断固とした手段を講じるべきだった。トリカスタン原発のケースは、フランスの原子力安全政策に構造的問題があることを証明するものだ。現時点で、ASNが緊急に稼働停止を命令しなければならないほどの重大な危険があるという現実は、フランスの原発安全監視体制そのものに問題があることを示している」と批判する。

1999年のブレイエ原発の例からも、嵐や豪雨による洪水が原発にとっていかに大きな危険を意味するかがわかるが、世界的な気候温暖化の影響により、そうした危険はますます高まっている。また、危険な状態にあるフランスの原発は、トリカスタン原発だけではないのだ。フランスの原発専門家たちが調査したところによると、フランスに存在する58基の原発のうち、問題のない原発は一つもないという結果が出たという。ドイツ人にとっての心配のタネは、ドイツとの国境に近い老朽原発、フュッセンハイム原発で、ドイツ政府は何年も前からフランス政府に対し、最悪の事態が起こる前に廃炉にするよう求めているが、未だに実現していない。

 

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