配電網を市民の手に - その3

あきこ / 2016年9月25日
stromnetz-in-burgerhand_5

ブランデンブルグ門での意思表示 © Jakob Huber

ベルリン市議会選挙を控えた8月下旬、「ベルリン市民エネルギー(BürgerEnergie Berlin)」が、ブランデンブルグ門前でベルリンの配電網を市民の手に取り戻そうという意志表示を行なった。「ベルリン市民エネルギー」はベルリンの配電網営業権をヴァッテンファル社から市民に取り戻すことを目的に、2012年に生まれた市民グループである。

ベルリン市とドイツの四大電力会社の一つであるヴァッテンファル社との配電網営業権契約は2014年末に切れることになっていたが、いまだに次の契約相手が決まっていない。この遅れについては、ガス事業の営業権の譲渡をめぐる混乱が関係している。2016年2月半ばに入札が再開され、8月下旬入札が締め切られた。最終的に入札に残ったのは、ヴァッテンファル社、ベルリン・エネルギー社(四大電力会社の一つであるE.On社が協力)とベルリン市民エネルギーの三者となった。8月30日、ベルリン市民エネルギーの記者会見があったので参加した。

ベルリン市民エネルギーの広報担当の女性ルイーゼ・ノイマン=コーゼルさんは、「配電網営業権をめぐる入札がなかなか進まない中、ベルリン市民エネルギーのような市民グループの組織がつぶれなかったことは珍しい。成立から今までの間に会員は約3000人に上り、営業権を購入するための資金として、1200万ユーロ(約13億9200万円)を集めることができた」と冒頭に語った。8月26日に提出した最終入札の内容については、ベルリン市当局から公開を禁じられているため詳細は話せないと断った上で、ベルリン市民エネルギーの基本的な考え方をまとめた。それによると、「最も大切なことは、ベルリン市と市民がともに責任を担う形態を作り出したこと」で、配電網の74.9%はベルリン市、25.1%はベルリン市民エネルギーに属し、25.1%に当たる資金を市民たちが出資するという。ベルリン市民エネルギーが提案する協力形態が実現すれば、配電網の営業がもたらす年間数千万ユーロ(数十億円)の利益を、ヴァッテンファル社という一私企業ではなく、ベルリン市と市民たちに還元されることになる。

記者会見では落札の見込みについて質問が集中したが、ノイマン=コーゼルさんはベルリン市民エネルギーが各党に積極的に働きかけた結果、緑の党や左翼党からは支持が得られていること、社会民主党(SPD)からもほぼ支持を取り付けられたことを強調した。「ドイツのための選択肢(AfD)」とは何も交渉していないということだった。

9月18日に行われた選挙の結果、SPDは議席数を減らしたものの第一党の地位を確保。キリスト教民主同盟(CDU)は歴史的大敗を喫し、SPDとのこれまでの連立は崩れ去った。その結果、現時点ではSPDと左翼党と緑の党の3党連立が予想されている。そうなれば、ノイマン=コーゼルさんが記者会見で述べたように、ベルリン市民エネルギーに配電網営業権が落札される可能性も出てくる。営業権を市民の手に取り戻し、エネルギー転換の促進にも貢献するというベルリン市民エネルギーの5年近くの努力が実を結ぶことを願っている。

Comments are closed.