原子力に依存しないエネルギー政策 - ベルリンにおける舛添東京都知事の講演

あきこ / 2014年11月2日

今年は東京とベルリンが友好都市の締結をして20周年に当たり、ここベルリンでも様々な記念事業が行われている。10月29日、ベルリン日独センターにおいて、舛添東京都知事とヴォーヴェライト ベルリン州首相兼市長が列席して、「スマートシティ創出につながる都市開発」と題するシンポジウムが行われた。シンポジウムの開始に当たり、ヴォーヴェライト市長、舛添知事がそれぞれ基調講演を行った。

ヴォーヴェライト市長は今年8月中旬、任期半ばで引退することを表明し、最近ベルリン州の社会民主党大会で彼の後任が決まったばかり。ベルリンの壁崩壊25周年という記念事業を終えて、12月11日に引退することになっており、今回の東京都知事を迎えての20周年記念事業は同市長にとっても最後の催しの一つである。そのせいか、講演はかなり熱のこもったもので、2030年にはベルリンがスマートシティになっているというグランドプランを語ったのであるが、社会民主党の市長ならではの視点があった。「ベルリンの将来がどのようなものになるにせよ、社会的弱者をはじきださない」というヴォーヴェライト市長の主張が明確に打ち出されていた。

舛添東京都知事は、25年前の壁崩壊のときにちょうどベルリンに居合わせ、壁の一片を部屋に飾っているというエピソードをドイツ語で語り、場内を沸かせた。その後、講演の主な部分は日本語になったが、2020年のオリンピック・パラリンピックを控えた東京が抱える問題として、ベルリンと違って地震があること(「今後30年以内に70%の確率で大地震が起こる」)、温暖化によってデング熱のような熱帯地方の伝染病が東京でも発生していることが挙げられた。2020年までの東京都のグランドデザインの中で、エネルギー政策として「原子力に依存しないエネルギー政策」という言葉が都知事の口から出たのには驚いた。さらに、現在の東京では再生可能エネルギーが6%を占めているが、2020年には太陽光、風力を中心に20%に引き上げることも発表された。それ以外に2020年には水素社会の実現(「世界は2030年を目指しているが、東京はそれに先鞭をつけて2020年を目標とする」)、省エネルギーの推進がエネルギー政策の具体策として挙げられた。

2020年まで後5年と少ししか残されていない。それまでに都知事が描くグランドデザインがどこまで実現するかはわからない。いずれにせよ今回のシンポジウムの一番の収穫は、東京都知事は原発に依存しないエネルギー政策を実現しようとしていることを知ったことだった。逆に気になったのは、今後格差社会が広がることが予想されている中で、東京のグランドデザインには社会的弱者という言葉が一度も出てこなかったことだ。

ヴォーヴェライト市長は、「姉妹都市交流においては、コピーライトなどは問題にならない。東京が成功した事例はベルリンも学ぶことができる。姉妹都市が切磋琢磨し、互いに学びあうことこそ姉妹都市交流の目的だ」と述べた。現在稼働している原発がゼロ基の日本がエネルギー先進国として世界をリードするために、2022年にすべての原発を停止させるドイツと、さまざまな知識や経験の交流を重ねていくことができれば素晴らしいと思った。

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