プラスチック・プラネット  ― その3 ―  プラスチック無し、1週間の冒険

やま / 2012年6月24日

私たちの身の回りをみると、プラスチックでできていない製品を探すのは大変です。便利で素敵な製品は、生活に欠かせない必需品となっています。いくら問題があるとはいえ、まったく放棄することができるでしょうか。ある若いカップルがNOプラスチックの一週間に挑戦しました。

テレビ番組クォークス・アンド・コー(Quarks & Co)が主催したテスト体験に応募したのはケルンに住むタマラさんとエッサンさんです。クォーク・アンド・コーは、物理学者でありジャーナリストでもあるランガ・ヨガシュヴァー氏(Ranga Yogeshwar)の司会する番組で、そのモットーは「知るっておもしろい」。一般の人にも非常にわかりやすく、科学分野だけではなく専門的な問題を取り上げ、追求していきます。プラスチックをテーマとした放送の一部にこのカップルの体験が放映されました。

一日目。実験現場となる彼らのアパートで次のようなルールが説明されました。

­1週間、できるだけプラスチックなしで過ごしてください。
­どうしてもないと困る物には”待った”と書かれた札を貼ってください。
­このテスト期間、プラスチック製品を一切買わないでください。
­困ったときには専門家の助言を3回受けることができます。
­毎日ビデオ日記を付けてください。

まず最初に下準備です。アパートにあるプラスチック製品を取り除き、1部屋にまとめます。ここは1週間、立ち入り禁止です。テスト期間中どうしても必要なものには”待った”の札が貼られました。
「一週間、テレビとコンピューターなしは無理」
「アイロンは絶対に必要」などと札がつきました。
台所にあったプラスチック製品は胡椒挽きと、つまみにプラスチックがついているサモワールのほかは、全て規則どうりに片付けました。台所とは反対に、浴室は特にプラスチックが多く、水はねを防ぐカーテン、洗面器の上の棚、棚のうえのシャンプー、化粧品、洗面用具など大半でした。これらには代用品が見つかるまで仕方なく札が貼られました。CDをはじめ、プラスチック製フレームの絵も、化繊とスポンジでできたクッションもなくなり、プラスチック無しの部屋はどこか殺風景です。
「居心地がいいとは言えないわ。友達やお客さんが来たら恥ずかしいわ」とつぶやくタマラさん。  「ぼく、そんなの気にならない」とエッサンさん。

二日目。二人は布袋を持ち、買い物にでかけました。ラップやビニールで包装されていない野菜は見つかりました。蓋についているシーリング材はプラスチックではないかと疑いながらも瓶入り牛乳を買いました。肉とチーズコーナーでは食品は全てラップや発泡スチロールに包まれていました。量り売りカウンターでも肉、ハム、チーズ類は衛生上ラップに包んで渡すのが規定だと断わられましたが、持参したガラス容器にふたがあったので、ラッピングとして納得してもらい、売ってもらえました。買い物メモにはまだシャンプーなど必要なものがあったのですが、スーパーではプラスチック無しの製品は見つからず、結局家にあるものを使うことになりました。

3日目。そろそろタマラさんはプラスチック無しの生活にうんざりしてきました。せっかく友達が遊びに来たのに、プラスチック製のコーヒー沸かしも使えず、たいしたもてなしはできませんでした。いらいらした彼女は専門家にスカイプすることにしました。インターネット通話に出てきたのは、オーストリア・シュタイヤーマルク州に家族5人で暮らすサンドラ・Kさんです。彼らがNOプラスチック生活を2009年に始めたきっかけは、ヴェルナー・ボーテ監督のドキュメンタリー『プラスチック・プラネット』だったそうです。
「洗剤、洗面用具はプラスチック無しの製品はまずありません。家では掃除用によくお酢を使います。植物性洗剤を作っている会社をみつけて缶に分け売りしてもらっています。この洗剤は万能で、シャンプーとしても、ボディーローションとしても使えます。掃除用の洗剤としても利用できます」。このような実用的なアドバイスのあと、「持っているプラスチック製品は大事に使い、後で代用品に換える。でも一番大切なことは、省いていくという心構えです。」と助言するサンドラ・K さん。

4日目。エコに配慮してビオ・スーパーに行きましたが、結局ここでも何十種類もあるシャンプーの容器はプラスチックでした。歯磨きクリームのチューブの蓋もプラスチックが使われていました。がっかりした彼等を慰めてくれたのは青空市場です。近辺で収穫された野菜や果物、新鮮なハムとチーズを買うことができました。ガラス容器も布袋も今回十分に持って出かけた2人にとって、楽しい”テスト満点”の買い物でした。

5日目。すっかりプラスチック無しの生活に慣れてきた2人。アイディアが次から次へと浮かんできました。献立もいつもと違い、意外とバラエティーに富むようになりました。エッサンさんの好物のチップスはプラスチックの袋に入っていて買えません。そこで彼は自家製のチップスを作ってみました。これだったら客に出しても恥ずかしくないと好評でした。

6日目。やっと紙袋に入った固形シャンプーを販売している専門店がみつかりました。ここで買った箱入り錠剤型の歯磨き”クリーム”を使いながら、ビデオ日記に語るエッサンさん。
「口に入れるとまず砕けてざらざらして奇妙です。歯ブラシで磨いても泡はでないですが、磨き終わった後はなかなか良い感じです。」

最後の日。2人の感想をまとめてみると:

自分たちがこんなにプラスチック製品を持っているとは信じられなかった。これらが使用後ごみとしていつまでも残ると思うと実にショックだった。
苦労は、少なくなかった。例えば電気ケトルやコーヒー沸かしのない生活はきつかった。ルール違反とはわかっていたが、コーヒー沸かしをこっそり使った。
面白かったのは代用品の情報検索や商店の探索だった。
慣れてくるとNOプラスチックの生活は意外に難しくなかった。
体験実験は成功したと思った。

この番組の動画
http://www.wdr.de/tv/quarks/sendungsbeitraege/2011/1129/007_plastik.jsp?mid=494513

写真
Leonard John Matthews

Comments are closed.